04/02/18
04/02/24
■ “flat-sour”原因菌とはなに???
【質問】
 ドリンク工場の品質管理をしているものですが, PETのお茶のホット販売のもので“flat-sour” 原因菌のコロニー数が必要とされるようになりましたが, 耐熱性で, ホットベンダー (55℃) で加温販売される時に内容物を腐敗させる菌と言う情報だけで, 実際にどのような状況で発生する菌なのか??? どのようなコロニーを形成するのかわかりません。ちなみにDifco 粉末培地のDextrose Tryptone agarを使用しています。

【回答】
 Dextrose Tryptone agarは, 中・高温性および耐熱性フラットサワー細菌の分離に用いられています。耐熱性フラットサワー菌であるBacillus coagulans (耐熱性菌も分離されています: Feig and Stersky, J. Food Sci. 46: 135〜137) は黄色または淡黄色のコロニーを形成し, 高温性フラットサワー菌のBacillus stearothermophilusは茶色の小さなコロニーを形成します。また, 硫化水素産生の菌としては, Desulfotomaculum nigrificansが有名です。この分離培地としては, 亜硫酸・鉄培地のような亜硫酸塩を含む培地が用いられます。至適温度は55℃です。硫化水素を産生し, 黒いコロニーを形成します。私の経験ですと, 通常のシャーレによる混釈培養ではうまく培養できません。パウチを用いることをお勧めします。また, 培地は使用されているDextrose Tryptone agarで大丈夫です。この際, 55℃で培養した後, 発育したすべての菌数を測定します(パウチを取り扱うときは, 寒天が崩れやすいので充分注意してください。また, パウチと寒天の間に凝固水が生じますので, コロニーが拡散することもありますので, 培養20時間経過した時に1回測定しておいて, 48時間まで培養して観察することをお勧めします)。1980年代に, 日本缶詰協会の松田典彦ら (食衛誌 23: 480〜486, 1982; 日食工誌 32: 444〜449, 1985) が研究し, 発表しています。ちなみに, フラットサワーは缶詰めの腐敗で, 膨張せずに (通常, 腐敗した缶詰めは膨張します) 内容物が酸性化してしまうため, 外観ではわからず, 顧客が缶詰めを空けた時にはじめてわかるという製造メーカーにとってはやっかいな代物です (今まで, 国内では缶コーヒーや缶しるこで問題になりました)。

 フラットサワーはフラット (平らな)とサワー (すっぱい, 酸性化) のふたつの言葉に由来します。

(日水製薬・小高 秀正)

【追加質問】
 親切な回答ありがとうございます。はじめから書けば良かったのですが, あとひとつ質問してもよろしいでしょうか???

 現在は, シャーレを使っていますが, 通常より高温のせいか, そのままだと培地の変色や乾燥が起こってしまうので, ラップを巻いているのですが, それではうまくいかないのでしょうか??? 菌は検出されないに越したことはないのですが, やり方が良くなくて検出されないのではやっている意味がなくなってしまいます。

 それから, パウチの件ですが, 嫌気性の培養の際にパウチの袋にシャーレを入れて培養するという方式は経験あるのですが, 直接パウチに入れて培養する経験はないのですが, 直接培養専用のパウチがあるのでしょうか??? 培地の乾燥以外にパウチを使う理由があるのでしょうか?この点についてもう少し教えていただければ助かります。

【回答】
 現在は, シャーレを使っていますが, 通常より高温のせいか, そのままだと培地の変色や乾燥が起こってしまうので, ラップを巻いているのですが, それではうまくいかないのでしょうか???

 私も, シャ−レでの培養経験はあります。しかし, 培養により離水が生じ, 判定時に困難なことが多いという印象が残っています。その点パウチ法は, パウチをヒ−トシ−ルして使いますので, 判定時の取り扱いなど, 便利なことが多いため使用しました。

 それから, パウチの件ですが, 嫌気性の培養の際にパウチの袋にシャーレを入れて培養するという方式は経験あるのですが, 直接パウチに入れて培養する経験はないのですが, 直接培養専用のパウチがあるのでしょうか???

 “パウチ”という一般名称はあちこちで使われていて, 質問者のパウチは回答者のパウチとは違うと思います。食品衛生で使われるパウチ法はシャ−レは入らない形になっています。現在, 酒見医科機器舗で製造販売されています。[http://www.pouch-hcho.co.jp/japanese/indexj.html]の「パウチのすべて」をご参照ください。

培地の乾燥以外にパウチを使う理由があるのでしょうか???
 最初に回答しました通り, 判定時に取り扱いが便利なためです。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 ご親切に二度目の回答ありがとうございます。パウチ法と言うのがあったのですね。離水の問題は確かに感じております。ドリンクの品質管理をしていますが, もともと微生物学や培養法を専門にやったことがなかったため, お恥ずかしい質問をしたようです。内の会社ではパウチ法を導入していませんので, 新しい試みになりますが, 上司に相談して検討したいと思います。


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