01/11/09
■福祉施設におけるMRSAの問題
【質問】
 卒業論文を制作するにあたって, 福祉施設に従事されている職員の方に「MRSA保菌者への対応について」といったアンケート調査を行っているのですが, その中でいくつか疑問がでてきたので, 質問をさせて頂きます。
【質問その1】
 福祉施設におけるMRSA保菌者の対応について質問があります。デイサービスセンターといった通所施設のなかには, MRSA保菌者を他の利用者へ広がることを防止するため, “受け入れ拒否”をしてところもあるようなのですが, 高齢の老人や重症心身障害者といった方が利用されるこのような施設では仕方がないことなのでしょうか。
【質問その2】
 MRSA保菌者を受け入れた施設で, もしMRSAが他のヒトへ広がった場合, その責任は受け入れ施設にあるのでしょうか。“受け入れ拒否”を行う際, 責任問題もひとつの決定要因になると思うのですが。
【質問その3】
 福祉施設にはMRSAに関し, どのようなマニュアルや通達が出ているのでしょうか。情報があれば教えてください。

【回答その1】各都道府県の行政指導が悪いのです。デイサービスセンターの利用や老人福祉施設の入居時におけるMRSA保菌の有無の項目を削除すべきです。ただ, そのためにはMRSAに関する正しい知識を行政やデイサービスセンターの方々に教育する必要があります。
【回答その2】MRSAの伝搬様式は, 主に「接触感染」ですので, 通常はスタンダードプリコーション (標準予防策)にそって施設側は予防します。このような対策を講じた上では, たとえMRSAが伝搬したとしても, 感染症を発症しなければ施設側に責任はありません。
 問題が発生するのは, 入居者が風邪などをひいた場合などに, 医師がMRSAの保菌の有無を知らずに, または検査せずに, MRSAを増加させる原因となる抗菌剤を安易に長期投与する場合などです。MRSAを上気道に保菌している方に抗菌剤を投与する場合は注意が必要です。医師の感染症に関する知識不足がMRSA感染症発症の最も大きな要因の1つでもあります。さらに, 老人福祉施設などでは「まるめ」といって検査が制限されているため, 十分な検査医療が受けられない実情も「検査できずに投薬」という現状を招いています。医師だけの責任でもないのです。
【回答その3】大阪府や東京都では福祉施設向けにMRSA 専用のマニュアルを作成・配布しています。大阪府の場合は, 府庁の福祉部高齢介護室 (06-6941-0351: 代表) まで問い合わせてみて下さい。頂けると思います。

(大阪大学・浅利誠志)

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