02/05/01
■ フラボバクテリュウム菌って, どんな細菌ですか???
【質問】
 フラボバクテリュウム菌について教えて下さい。患者さん痰より検出されました。あまり聴いた事のない菌なので教えて下さい。

【回答】
 ご質問の方がどんな職域 (医師, 看護師, 検査技師, 薬剤師, 事務など) の方で, フラボバクテリウムの何を知りたいのかわかりませんので, ここでは概説に留めます。
 まず菌名ですが, 1980年1月1日を新たな出発点として菌名整理が行われ, 承認菌名リスト (Approved Lists of Bacterial Names) が公表されました。その後の分類学に呼応した体系の組換え, 特に新菌名の提案は指定機関誌〔IJSEM (International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology), 以前はIJSB (International Journal of Systematic Bacteriology)〕に掲載され, 正式に認められています。故に, 正式菌名は分類手法の進歩に応じ統廃合されているわけであり, 私たちはこれを指標にしています。ただし, 臨床に則した分類ではなく, 自然界全体の細菌分類であることから, 臨床材料から分離されていない細菌も含まれていることを認識してください。

 さてお尋ねのFlavobacterium属ですが, この名称は黄色の小桿菌と言う意味であり, 多くの菌種が非水溶性の黄色色素 (レモン色, オレンジ色, 淡黄色など) を産生する特徴をもっています。現在22菌種がFlavobacterium属に含まれていますが, 臨床材料から分離されているのはFlavobacterium mizutaiiFlavobacterium  odoratum などの限られた菌種です。ただし, 分類の統廃合により以前Flavobacterium属に含まれていた菌種の中には臨床材料や病院環境から分離されているものもあります。例えばCryseobacterium meningosepticumCryseobacterium indologenesSphingomonas paucimobilisEmpedobacter brevisSphingobacterium spiritivorumSphingobacterium multivorum などはすべてFlavobacterium属に含まれていた菌種です。

 臨床材料から分離されるこれらの菌種は, ブドウ糖を発酵分解できない好気性グラム陰性桿菌であり, 土壌, 淡水などに生息し, 人に病気を起こすもの, 魚類の病原性となるもの, そして食品工業関係では腐敗菌として問題視されています。人の病原菌として重視されているのはCryseobacterium meningosepticumであり, 菌名の由来meningos (脳髄膜), septikos (腐敗性の) どおり新生児化膿性髄膜炎患者や敗血症患者の血液や脳脊髄液から検出されています。ただし, 多くの場合は免疫不全患者など抵抗力の減弱した患者での感染症であり, 尿や喀痰などから検出した場合は臨床症状と合わせ起炎菌かどうかを慎重に判断すべきでしょう。さらにこれらの菌種はあらゆる病院環境 (水道の蛇口, 流し台, 加湿器, 薄いヒビテン溶液など) からも検出されることから, 白血病患者や臓器移植後患者など高度免疫療法を行っている患者の環境整備にも十分な配慮が必要と言われています。
 今回ご質問のフラボバクテリウムがどの菌種を指しているか不明でしたので, あえて古い分類による菌名を含めお答え致しました。

(大手前病院・山中喜代治)

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