■ 糞便検体の採取法について | |
【質問】
岩手県の重症児施設の検査科に勤めております。 糞便の細菌検査の検体採取法について教えていただきたいのですが, 培養検査を出す場合, スワブで提出したものと, 糞便そのもので提出したものでの結果の違いはあるのでしょうか。 【回答】 スワブによる提出でも,的確に採取され, 目的菌がある程度はっきりとしていれば, 糞便そのものの提出と大きな結果の違いはないと考えられます。検査時に便が出なかったり,量が少なくて乾燥しそうな場合,または長時間保存しなければならないような場合には輸送培地入りのスワブなどが薦められますが,可能であれば糞便そのものの提出の方が良いと思います。それは, 糞便そのものを肉眼的に観察することで, 患者さんの今現在の下痢の状況が判断できますし,予期していなかった原因微生物を推定できることもあります。例えば,米のとぎ汁様の水様便であればコレラ菌,粘血便であれば腸管出血性大腸菌やカンピロバクターなどが疑われます。カンピロバクターの場合には粘血部のグラム染色で特徴的なラセン状形態が認められますので,即診断可能なこともあります。また細菌以外でもイチゴゼリー状の粘血便であれば赤痢アメーバ,乳幼児で白_黄白色の便であればロタウイルスなどが推定されます。 検査結果に影響を与えるものは検査材料の種類やその提出方法よりもむしろ検査のタイミングだと思います。下痢そのものは生体の防御反応の一つであり,下痢のたびに体外へ菌を排出し,菌量が減少することが予想されます。また抗菌薬使用後では菌が検出されないことが多く認められます。したがってどちらで提出されたとしても,下痢発症後の最も早い時期に採取された検体を優先すべきだと思います。 (玉名中央病院・永田 邦昭) 先日, 検体採取法について質問させていただきました。分かりやすい回答をありがとうございました。 |