■ ガス産生の乳酸菌 | |
【質問】
こんにちは。食品メーカーで品質管理業務に従事しているものです。 先般商品の“膨張現象”が見つかり, 微生物の見地より原因菌種の特定を実施して いるのですが, 思うように菌の分離がうまくいきません。各種検査法に則り, 生菌として捉えた菌はあったのですが, この菌を増殖させ, 製品に再接種を施しましたが, 思うように再現されませんでした。捉えた乳酸菌は L.paracasei でしたので, ガス発生してもおかしくはない種のはずなのですが・・・以上の操作は主に“好気的条件”にて実施しています。 ここで質問です。一般的に乳酸菌は, どの文献をみてもそれこそ「一般に乳酸菌は通性嫌気性」とあります。ガス発生を起こす乳酸菌で, 「絶対嫌気性」の種は存在しますか??? ちなみに, 当検出菌種は桿菌で, ビフィズスのではない様です。問題製品の条件はpH 4.2 Aw 0.91 総酸1.6 食塩5.9 でした。以上, おわかりになるようでしたらご返答よろしくお願いいたします。 【回答】
さて, “膨張現象”といえばガス。ガスといえば嫌気性菌が関係することが多いとされます。ガス産生菌としては, 偏性嫌気性菌である有芽胞菌のClostridium属の菌種が先ず頭に浮かびます。内容物の直接塗抹標本のグラム染色で陽性のストレートロッドを確認したのでしょうか??? 芽胞はみられませんでしたか??? 悪臭についての記載はないのですが, なかったようですね。検体のpHは低いのですが, 悪臭の強くないClostridiumも存在しますので, このような場合, 選択培地を非選択培地に加えて嫌気培養をすることをお勧めします。Clostridiumの存在を確実に否定することが大切ですし, 嫌気培養をすることにより, 好気培養で分離されたLactobacillus paracasei以外の乳酸桿菌が分離されてくる可能性も否定できないからです。また, 保存食品の種類が何か分かりませんが, 低温菌, 中温菌の他に, 高温菌, 好熱菌, 耐熱菌についても考える必要があるかもしれませんね。 (岐阜大学・渡邉 邦友)
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