■ 偽膜性大腸炎の回復期でしょうか??? | |
【質問】
ご多忙中とは存じますが, 教えてください。 尿路感染症に対しCMZにて加療, 軽快し, 退院した直後に熱発し, 再入院, 尿路感染症の再発と考え, 再度CMZ投与し, 臨床的にも検査においても軽快してきました。ただ, 再入院当初, 家人より帯下が多いとの指摘がありましたが, どうも肛門からの排泄物のようだとの指摘があり, もしやと思いCDテストしたところ, 「陽性」でした。再考するに, 初回, 入院時の抗菌薬にて偽膜性腸炎を発症, 再入院時の病態は尿路感染症ではなく偽膜性腸炎だったと考えました。内視鏡検査ではアフタと発赤が散在し, 偽膜はみられず, 回復期なのかと考えました。臨床的に軽快しているような場合はバンコマイシン投与はせず, 経過観察でよいのでしょうか。それともCDテスト陽性を考えると投与した方がよいのでしょうか??? まず第一は, 原因薬剤の中止と考えますので, バンコマイシンは投与せずに経過をみているのですが・・・・・ 【回答】
【追加解説】
◆ 粘液便だったのでしょうか。C. difficile関連下痢症/腸炎は炎症性疾患ですので, 粘液便を呈すことは少なくありません。本人や家人の観察や表現は御質問のように不適切なこともありますので, 医師自身が糞便検体の観察をすることは重要と考えますが, いかがなものでしょうか??? さらに, 御質問の“CDテスト”とは, 糞便検体中のtoxin A検出と推察されます。本試験はやや感度に劣るので, toxin Aが「陰性」であっても臨床的に強く疑われる場合は菌の培養検査をぜひ行ってください。 ■ 再考するに, 初回, 入院時の抗菌薬にて偽膜性腸炎を発症, 再入院時の病態は尿路感染症ではなく偽膜性腸炎だったと考えました。内視鏡検査ではアフタと発赤が散在し, 偽膜はみられず, 回復期なのかと考えました。 ◆ C. difficile関連下痢症/腸炎は, 必ずしも偽膜性大腸炎のかたちをとるわけではありません。非特異的炎症所見を呈すC. difficile関連下痢症/腸炎のほうが多く, 偽膜形成が認められた場合はかなり重篤な症例と言えるでしょう。余談ですが, 本症例の場合, 尿路感染症に関する検査結果はどうだったのでしょうか。 ■ 臨床的に軽快しているような場合はバンコマイシン投与はせず, 経過観察でよいのでしょうか。まず第一は, 原因薬剤の中止と考えますので, バンコマイシンは投与せずに経過をみているのですが。 ◆ C. difficile関連下痢症/腸炎は, 誘因となった抗菌薬や抗がん薬などを中止あるいは変更することにより回復してくる症例が少なくなく, 特に症状が軽度である場合, バンコマイシン投与を必要としないことが多いので, 御質問のような治療が適切であったと考えます。 (国立感染研・加藤 はる)
【質問者からのお礼】
この度は迅速かつご丁寧なアドバスを頂戴し, 誠にありがとうございました。今後の診療に生かして行きたいとおもいます。今後も,
ご教示いただきたいような事例がございましたら, ご無理をお願いするかもしれませんがよろしくお願いいたします。
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