03/06/09
■ 染色で用いるフェノールの取り扱い・廃棄について
【質問】
 私は某県の家畜保健衛生所に勤務しています。最近グラム染色の新法としてB&M法が注目されていますが, パイフェル液の調製に“フェノール”を使用すると聞きました。フェノールは毒劇物の取り扱いを受け, その廃液処理が厳しく規制されています。現場で使用する場合の取り扱い上の注意, 廃液処理の方法などについてご教示いただければ幸いです。

【回答】
 パイフェル液はチールの石炭酸フクシン液を精製水で7〜10倍希釈したものをいいます。このパイフェル液はB & M染色のみに使用されているのではなく, 他のグラム染色法や単染色にも広く利用されています。チールの石炭酸フクシン液はフクシン原液10 mlと5%フェノール100 mlを混合しますので, これを約10倍希釈したパイフェル液に含まれるフェノールは5 g/lということになります。実際の染色に際しては1枚のスライドグラスに約1 mlのパイフェル液を使用しますので5 mg/1枚のフェノール量となり, さらに1枚の染色で水洗する水道水の量は約100 mlであり, 最終的には 5 mg/100 mlのフェノール量が排水されることになります。さて, ここで問題になるのが水質基準でありますが, 廃棄物の排水基準を定める省令の第一条 (水質汚濁防止法) の海域以外の公共用水域に排出される許容限度はフェノール類含有量5 mg/l 以下となっていますので, 日常検査でのグラム染色で利用するフェノール量はこれを越えていないことになります。加えて, 1日に使用する水道水の量は想像以上であり, フェノールの排水量はさらなる希釈を受け, 最終濃度は微々たる数値に置き換えられることになります。だからといってむやみに廃棄して良いと言うものではなく, 公害要素を含まないものへの変更や微量使用の心がけが大切と考えます。

(大手前病院・山中喜代治)

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