04/02/18
■ グラム染色での火炎固定の意味
【質問】
 私は, 会社で無菌検査をしています。グラム染色では火炎固定をしてから染色しています。最近, ふと思ったことなのですが・・・なぜ火炎固定をするのでしょうか??? 火炎固定にはどんなメリットがあるのでしょうか??? たとえば, 菌のよるエアロゾルが少ないとか, 滅菌などの作用があるなど, なにかあれば教えてください。

【回答】
 固定操作は, 被検材料をスライドグラスに貼り付け, 菌体構造を変化させない操作であり, 一般的で最も手軽な方法に“火炎固定”があります。しかしこの方法では塗抹する材料の種類によって変質しやすく, また加熱の加減やむやみな操作を加えると菌体の変形, 破壊, 収縮, 膨張, 自家融解, 人工産物の生成が起きます。薬剤を用いる固定法もありますが, 多価重金属の場合は遊離カルボキシル基と結びつき, またホルマリンではアミノ基と反応して塩基性色素との親和性を変化させるなど, 調整が必要です。できるだけ自然な状態で固定されることが大切であり, その意味からもメタノール固定法が推奨されています。Magee (1975年) らはStaphylococcus aureus 18株をTrypticase Soy Brothで1_4日間培養し, その菌液を用いて加熱固定法とメタノール固定法の比較実験を行った結果, 本来グラム陽性であるべきS. aureusが陰性化する率が加熱法で多いことを指摘し, 陰性化のみられないメタノール法を推薦しています。私達も喀痰 276検体について固定法の実験を行った結果, メタノール法を良好とした結果が195検体(70.7 %), 両者に差がなかった結果が72検体(26.1 %) で, メタノール固定法の良好な成績が得られました。一度, メタールによる1分間固定法を試してみてください。
 

(大手前病院・山中喜代治)


【回答の補足】
 火炎固定ではエアロゾル発生の危険性がむしろ高いこと, 火炎固定しても標本は滅菌されていないことを補足しておきます。標本に結核菌を含むような場合には, 特に問題となります。火炎固定は簡便で, 費用 (試薬) が特に発生しないことから採用されているのが現状でしょう。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 とても解りやすく回答していただき, ありがとうございました。新しい職場で, 初めて細菌検査をすることになり, いろいろと疑問が生まれてくる毎日です。今回いただいた回答を参考にしていきたいと思います。メタノール固定をしてはどうかと提案したいと思います。ありがとうございました。


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