03/02/19
■ B型肝炎ウイルス (HBV) はオートクレーブで死滅する???
【質問】
 都内で歯科衛生士をしています。私の勤務している歯科診療所では, B型肝炎ウイルス保菌者に使用した器具を, 診療後中性水に10分浸し, その後オートクレーブで121℃, 5分の滅菌をしています。先日中性水がなくなってしまい, 先生と相談をしたところ, 先生は“オートクレーブにて121℃, 5分の滅菌で芽包は死滅する”と言われました。しかし, 私は衛生士学校で“オートクレーブのみの滅菌では芽包は死滅しない”と習いました。調べた結果, オートクレーブで芽包は死滅するという意見が多かったのですが, その滅菌時間や温度にかなりのばらつきがありました。そこで, HBVウイルスはオートクレーブで完全に芽包が死滅するのか, 死滅するとしたらその滅菌時間や温度はどれくらいなのか。また, オートクレーブで完全に死滅しないとしたら, どのような方法をとれば完全に死滅するのかを教えてください。また, 当院ではHBVウイルス保菌者に使用した器具も, 健全な患者さんに使用した器具も, 同じ中性水に浸して消毒しているのですが, 別の容器で浸す必要性はないでしょうか??? 効果は劣りませんか???

【回答】
 まず最初に, 質問のなかのいくつかの間違いを指摘しておきます。まず“芽包”という表現がありますが, これは“芽胞”が正しく, 一部の細菌がその環境が悪くなった時につくりだす固い殻をかぶった“耐久型の細菌”です。質問のなかにあるB型肝炎ウイルス (HBV) は細菌ではなく, ウイルスですので“芽胞”をつくることはありません。

 オートクレーブでB型肝炎ウイルス (HBV) は死滅するかという質問ですが, 答えは“死滅します”。15分間の煮沸 (100℃) や121℃ (2気圧) 5分間の高圧滅菌をすると感染することはありません。

 オートクレーブの滅菌時間と温度ですが, 滅菌の対象となる微生物の種類でいろいろと条件が違ってきます。普通の細菌 (大腸菌など) では121℃, 1分間の処理で99.9999%の細菌が死滅します。しかし芽胞をもつ細菌では, 例えば納豆をつくる枯草菌では99.9999%が死滅するのに5分間, 温泉などの熱湯に生息している特殊な細菌では15分間が必要となります。さらに狂牛病で有名になったプリオンという病原体では132℃ (2気圧) で1時間または135℃, 20分間以上のオートクレーブが必要とされています。

 それと質問のなかで, “消毒”と“滅菌”というふたつの言葉が安易に使われていますが, その意味は全然違うものだということを学んでください。消毒して滅菌しても, 消毒しなくて滅菌しても, 正しく滅菌されていれば, 滅菌という効果において違いはありません。

(琉球大学・山根 誠久)

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