03/06/17
■ HBV (B型肝炎ウイルス) ワクチンで肝炎が起こる???
【質問】
 検査技師です。当院では, HBV(B型肝炎ウイルス) ワクチンを希望者という形で実施する一方, 希望しない者は“辞退届”を提出するという内容があります。辞退届の意味合いは伝えられていませんが, 接種を受けないで, もし感染したら, 病院はこの届紙の存在から, どういう対応を取られるのかと疑問に思いながら, 接種することでの副作用も気になっています。副作用は, 腫れ・発熱・頭痛ぐらいで, 重篤なものは認めないといわれますが, HBVワクチンを接種することで, 免疫細胞を破壊することにより肝炎が起こることはありますか???

【回答】
B型肝炎ウイルスのワクチンによって, 肝炎を起こすことはありません。ワクチンに使われている成分は, 遺伝子操作から作られたB型肝炎ウイルスの一部 (HBs抗原のみ) であり, ワクチンで感染する可能性はまったくないからです。

B型肝炎ウイルスのワクチン接種を希望しない職員については, “辞退届け”を提出するとのことですが, 恐らく病院としては「ワクチン接種の機会を提供して, 業務感染を積極的に防止している」という姿勢を内外に表明したいのだと考えられます。もし貴方が針刺し事故でB型肝炎に感染したとすると, これは労災 (労働者災害補償) の適用になります。ただ, ここで貴方が病院を民事訴訟で訴えた場合, 病院は「ワクチン接種の機会を提供して, 業務感染を積極的に防止している」という説明から, 賠償を逃れようとするでしょう。ワクチン接種を正当な理由なく辞退している場合には, 賠償額が低くなる可能性があると考えます。またワクチンの副作用で障害が出た場合, 病院はワクチンの接種は強制ではなく, 任意だから, 副作用への責任はないと主張すると思われます。いずれにしろ, 微妙な問題を含んでいます。

(琉球大学・山根 誠久)

[戻る]