02/08/01
■ 閉鎖式輸液ルートでのカテーテル感染の発生率
【質問】
 感染対策室の専任看護師として, 院内感染対策に関する業務に携わっています。
 現在, 当院ではIVHラインに閉鎖式輸液ルート (三方活栓を用いない) を使用したいと検討しています。ニードルレス・タイプ, ニードル・タイプと各社あるようですが, ニードルレス・タイプとニードル・タイプでのカテーテル感染の感染率に差が出るという話はあるのでしょうか??? 確かに構造上では, ニードルレス・タイプはシリンジが, ニードル・タイプは針がそれぞれコネクタに接触するため, 接触面の広いニードルレス・タイプの方が菌が入りやすくみえます。是非, 先生のお考えをお聞かせください。

【回答】
 御質問の内容に確定的な回答をすることができません。現在のところ, ニードル・タイプとニードルレス・タイプで, “カテーテル菌血症”の発生頻度に差がある, あるいは差がないという明確な結論が得られていないからです。そもそも, 三方活栓の細菌汚染が菌血症と直接的な因果関係をもつのかさえ結論が得られていません。
この点に関し, 平成14年2月に刊行された「国立大学医学部附属病院感染対策協議会 病院感染対策ガイドライン」の記載は困惑させられる内容です。

 現在, 多種のニードルレス・システムが使用可能であるが、本来は針刺し事故の防止目的で開発された。いくつかのcase-controlled cohort studyでは、これらの器具がカテーテル菌血症の危険性を増加させることを証明している。・・・・・・・・・・・実験的には、ニードルレス・システムの刺入部の適切な消毒によりハブから輸液内腔への細菌の移動を防ぐことが示されている。また、crossover trialで、適切な訓練を受けた後にはニードルレス・システムを用いても感染の危険は増加しなかった。現段階ではニードルレス・システムのカテーテル菌血症に対する予防効果は不明である。

 この内容からすると; 
(1) ニードルレス・タイプは針刺し事故防止を目的に開発された
(2) しかし、ニードルレス・タイプはカテーテル菌血症の危険性を増加させる
(3) 従って, 医療従事者への適切な訓練を必要とする。

 ということに要約されます。ただ気になるのは, 最後の文章で, 「現段階ではニードルレス・システムのカテーテル菌血症に対する“予防効果”は不明である」と記載されており, なにか“ニードルレス・システムはカテーテル菌血症を予防する効果を目的に開発された”ような誤解を与える部分です。いずれにしろ, 上記の3点が現在の結論であると考えています。

(琉球大学・山根 誠久)

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