04/05/06
■ ヘパリンの有効期限
【質問】
 NICUに勤務している看護師です。当NICUでは, PIルートから点滴する薬剤にヘパリンを添加しています。その際に使用するヘパリンは, バイアルを開封後1週間を期限として分割使用しています。1回の使用量が少ないため, こう決まったのだと思いますが, 汚染されたり, 薬効が落ちたりしないものなのでしょうか??? 当院の薬剤部に問い合わせたところでは, 分割使用はしてはいけないとのことでしたが, そうすると1日に膨大な量のバイアルを消費することになり, 現実的ではないと思います。

 以前いた別の施設では, 24時間で破棄をしていました。しかし調べたところ,「24時間なら大丈夫」というデータもなさそうでした。どうか, ご回答をよろしくお願いします。

【回答】
 バイアル瓶の使用に際し注意しなければならないのは, 穿刺による細菌汚染です。分割使用を目的とする注射剤は, 使用から次の使用の間, 密封することができる容器に入っていることが前提です。しかし使用毎に外部から栓を通して注射針を突き刺すので, 注射針を通しての細菌汚染が起こりえます。この汚染による細菌の増殖を防止するため, 製剤総則 (ガイドラインのようなもの) では「注射剤で分割使用を目的とするものは、別に規定するもののほか、微生物の発育を阻止するに足りる量の保存剤を加える」としています。汚染は多種の微生物の混合汚染が考えられるので, 保存剤は多種の微生物に有効なものでなければなりません。一般に分割使用を目的とした注射剤以外はこのような想定をしていないため, 「一度密封容器中に注射針を接触した注射液にはまったく保存性がない」と考えるべきであるとする報告も見られます。このことが, 分割使用はしてはいけないと言われた理由です。

 質問に対する回答ですが, 製薬会社も, 病院の薬剤部も, ヘパリンの分割使用に関するデータ (細菌汚染の有無, 力価の低下) を持っていません。そのため「開封後はなるべく速やかに使用すること」として明確な回答を避けています。「ヘパリン生食」へのセラチア菌混入によって院内感染が起きた事例が過去に報告されていることから, 使用しているヘパリン製剤に保存剤が添加されているものに関しては, バイアル開封後, 冷所保存にて24時間で使用する。残りは破棄するというのが賢明だと思います (ご指摘のとおりエビデンスはありません)。

(琉球大学・糸嶺 達)

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