02/04/01
■ 非無菌医薬品を対象とする微生物試験 (日本薬局方の改正に伴って)
【質問】
 製薬会社で医薬品の微生物試験を担当しています。
 今までは無菌医薬品のみが微生物学的品質管理の対象であったのですが, 今回局方が改正されて, 非無菌医薬品も微生物試験の対象となりました。そこで, わが社でも非無菌医薬品の最終製剤の微生物限度基準値を測定する試験を行う必要が出てきました。特定微生物としては, 大腸菌, 緑膿菌, 黄色ブドウ球菌およびCandida albicansがかかげられております。わが社で差し迫って必要な検出微生物は緑膿菌と黄色ブドウ球菌です。これらの微生物の検出および測定を簡便に行う際には, 選択培地の利用が必要と考えております。
 そこで自分なりに調べてみたところによると, 黄色ブドウ球菌では食塩卵寒天培地あるいはマンニット・食塩寒天培地を使用すればよいのではないかと思うのですが, どちらがより最適であるかがわかりません。緑膿菌については緑膿菌選択剤を含有したPASA培地という物がありますが, 果たしてこれは一般的に用いられる選択培地であるのかという不安があります。加えて, この選択培地の利用そのものに問題があるのではという不安もあります。
他の製薬会社の皆さんは今回の局方の改正に際して, どのような対処をなさっているのでしょうか。よろしくお願い致します。

【回答】
 結論から先に言いますと, 第十四改正 日本薬局方 (財団法人 日本公定書協会編集) の解説書に従って行えば十分です。関連数社の企業研究所に問い合わせたところ, どこでもこれに準拠して行っているそうです。

 今回の改正は本来未実施であった非無菌医薬品についても微生物検査を実施するよう指示されており, これらは (1) 汚染微生物の増殖を許容する可能性があること, (2) 当該医薬品の薬効を損ねること, (3) 患者の健康に悪影響をもたらす危険性があることなどから, 品質, 安全性, 有効性を確保するために設けられました。この解説書の「12. 非無菌的医薬品の微生物学的品質特性」には定義, 試験の適用除外, 資料の採取方法及び試験の実施頻度, 微生物管理計画書, 非無菌医薬品の微生物限度基準値, 生薬及び生薬を配合した製剤の微生物限度基準値が詳細に記載されています。また, 微生物限度試験法には (1) 生菌数試験, (2) 特定微生物試験 (大腸菌, サルモネラ, 緑膿菌, 黄色ブドウ球菌), (3) 緩衝液と培地が列記されており, 見た限りでは標準法と理解できます。この中には緑膿菌用培地 (セトリミドカンテンまたはNACカンテン) や黄色ブドウ球菌用培地 (フォーゲルジョンソンカンテンまたはマンニット食塩カンテン) が紹介されています。目的が同じであれば現在市販の選択培地に大差はないものと思われますので使い慣れたものを常備しておくほうが良いでしょう。したがってお尋ねの黄色ブドウ球菌用の食塩卵寒天培地あるいはマンニット・食塩寒天培地はいずれでも良いと思われますし, 緑膿菌用のPASA培地にしても十分目的に合った製品であり信頼して使われたら良いでしょう。

 この局法に準拠して栄研化学株式会社では検査マニュアルを発行しています。このマニュアルは (1) 生菌数試験・特定微生物試験・無菌試験の図式によるわかりやすい手順 (2) Escherichia coli,  Bacillus subtilis, Staphylococcus aureus, Candida albicansのグラム染色鏡検写真, (3) 生菌数検査方法別の培地写真 (実際の発育集落), (4) 特定微生物 (Escherichia coli, Salmonella, Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa) の増菌培地, 分離培地, 同定検査の実際の写真, (5) 培地の取り扱いに関する解説, (6) 局法の培地成分一覧などで構成されており, 医薬品微生物検査の実践マニュアルとして推薦できる参考書のひとつです。このマニュアルにつきましては栄研化学株式会社 (東京都文京区本郷 1-33-8, Tel 03-3813-5401) にお問い合わせください。

(大手前病院・山中喜代治)

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