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【質問】
いつも丁寧に教えていただき, ありがとうございます。
臨床とは関係ない質問なのですが, 調べても答えられなかったので教えていただきたいのです。
非定型抗酸菌は薬剤耐性であることが多く, なかなか除菌できないのですが,
“ヒトからヒトへの感染”がないというのはどのような事実に基づくものなのでしょうか???
寄生虫などですと, ヒトからヒトへ感染できない寄生虫は人体内では生存が困難なものが多かった気がしますが???
ここまで非定型抗酸菌が人体に居心地よく住み着くからにはヒトからヒトへの感染があっても不思議でないと思うのですが...
【回答】
簡潔にお答えいたします。Evidence Based Medicine という観点からの情報としては徹底的に調べたことはないのですが,
非定型抗酸菌症については, 女性に多いこと, 小児に少ないこと, 家族内感染が認められないことなど,
接触がかなり濃厚な状況であっても感染した事例が認められないことより, 「ヒト」から「ヒト」への伝播がないとされていると思います。1次非定型抗酸菌症は中年の女性が多く,
体質的なものによる要因が強いのではないかとされています。御質問者の「ヒト→ヒト感染があっても不思議でない」と言うことですが,
前述しましたように, この非定型抗酸菌はヒトからヒトへの感染が確認された事例報告がないのです。実際はあるのかも知れませんが,
キチンとした学会や論文報告としては知られていないことから, 一般的には「ヒト→ヒト感染はない」と考えられています。したがって,
周りにいる人 (患者) に対する感染予防対策も不要とされています。もし, 今後に明らかな「ヒト→ヒト感染」による集団発症事例でも勃発すれば,
これまでの考え方に変更が求められるのでしょうが ・・・。
(信州大学・川上 由行)
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