■ 放線菌について | |
【質問】
臨床検査技師をしております。○×病院微生物検査室に勤務しています。以前, 幾度かの質問にご丁寧に返答頂き, ありがとうございます。感謝しております。 さて, 気管支拡張症の患者様の膿性洗浄喀痰におけるグラム染色にて, 分岐したグラム陽性桿菌の貪食像を多数認め, その他の菌は認められませんでした。キニヨン染色したところ, 抗酸性は認められませんでした。好気培養4日目にて同様のグラム陽性桿菌の10^6の発育を認めました。薬剤感受性をしたところMINO 2以下, ST 80以上, βラクタム系は高いMICを示しました。コロニーよりキニヨン染色したところ, やはり抗酸性はみとめられません。脱色には2%硫酸を用いました。Nocadiaを考えますが, 抗酸性が認められないことがネックとなっておりまが, いかがでしょうか??? この患者様の前回値をみたら, 一年前にも同様なグラム陽性桿菌がみられていました。医師に聴いてみたところ, 慢性の気道感染があるとのことでした。症状はひどくないので, 炎症マーカーなどの検査は実施されていませんでした。 【回答】
(1) 脱色に1%硫酸水を用いる。 培養されたNocardia sppの大部分は1%硫酸水を用いた変法Kinyoun染色で抗酸性を示します。しかし抗酸性の結果解釈はしばしば困難な場合があり, 抗酸性の結果相違は培地に左右されます。高濃度に脂質を含有する小川培地, Loewenstain-Jensen, Middlebrook 7H10培地が抗酸性に最も良い培地であり, 抗酸性はこれらの培地の脂質濃度に依存しています。また培養菌体の形態は材料から直接観察される形態と類似しています。 (2) 抗酸染色で形態が青みがかったピンクに染まる場合。 Nocardia の同定で抗酸性は最も重要ですが, 標準法がありません。このため抗酸性の解釈に混乱を招いています。今回, ご質問では抗酸性陰性と記載されているため, もし上記のように観察されていましたら, 同一スライドを再度, 抗酸菌染色を実施して見てください。カルボール・フクシンとの間にコントラストで明瞭に観察されるかもしれません。 培養菌体での抗酸性試験のみで菌種同定に用いるのではなく, 他の試験と併用して同定を実施する必要があります。しかしNocardia sppを対象とする他の生化学的試験は, この細菌が稀にしか検出されないために, 多くの検査室では準備されていないと思いますので, 簡単な性状だけ紹介します。 (1) Nocardia 培養における顕微鏡での証明方法 トウモロコシ培地 (ブドウ糖不含) などの最低限の栄養培地を作成し, 25℃で2_3週間培養する。顕微鏡で観察し, 分岐した菌糸がフィラメント状に綺麗に観察できます。 (2) Nocardiaの培養形態 白い粉状のコロニーは菌糸の発育を反映しますが, 肉眼で観察できる場合と出来ない場合など様々です。コロニー形態は非常に多種多様であり, スムーズなコロニーが出現する場合もあります。コロニー形態は培地や培養温度に依存して変化します。分離頻度の多いN. asteroidesのコロニー形態は通常オレンジから黄褐色を示します。 以上, 試してみて下さい。 (琉球大学・仲宗根 勇)
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