03/12/24
03/12/25
■ インフルエンザの検査と業務感染
【質問】
 いつも大変勉強になります。病院で細菌検査を担当している臨床検査技師です。インフルエンザウイルスの迅速診断キット (IC法) でインフルエンザの検査を行う場合, 標準予防策, 飛沫予防策を講じていれば, 検査する場所は何処でもかまわないのでしょうか??? BSL-2の部屋で検査を行うべきでしょうか???

 また, SARSアラートが発せられた場合やSARS流行期になった場合はインフルエンザ抗原検査の対応はどのようにすればよいのか??? お教え願えないでしょうか???

【回答】
 インフルエンザウイルスはバイオセーフティ・レベル (危険度分類: Biosafety Level: BSL) 2に分類される微生物ですから, これを含むと考えられる検体を取り扱う際には, 標準予防策や飛沫感染予防への対策が求められます。しかし, 臨床材料に含まれるウイルスの濃度は, 高濃度のウイルス溶液を用いる科学実験の環境と比べ極めて低く, また当該ウイルスを含まない陰性検体の頻度も無視できないことから, バイオハザード対策のまったくない通常の検査室で検査されているのが実情でしょう。事実, インフルエンザウイルスの迅速診断キットに添付されている使用説明書には, 検査を行う環境や必要なバイオハザード対策については特に記載していないので, “制限なし”と理解できます。そうは言っても, 可能であれば, 業務感染の可能性を考慮した最善の検査環境で検査を行う努力が必要であると考えます。

 SARSの警告あるいはSARSの流行が確認された場合には, 貴方の医療機関の果たすべき役割と所有する検査環境によって対応が変わってきます。充分なバイオハザード対策が施されている施設 (BSL-2以上の設備をもつ) では, 地域に対する責任という意味からも, 検査を実施する必要があります。否定診断に必要なインフルエンザ抗原検出の検査もこれに含まれ, 生物学的安全キャビネット内で行う必要があります。BSL-2の設備がない場合には, しかるべき設備を整えた施設に患者を転送することになります。徒に, 設備がないにもかかわらず, 関与すべきではありません。SARSへの対応策は, いまだに“隔離”ですので, ウイルスに接触するヒトの数を制限することが原則です。琉球大学検査部での対応手順を参照してみてください。未だに, 現実と理想との妥協点を求めた対応策を模索しています。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 回答ありがとうございました。今後, 院内感染を起こさないためにも大変参考になりました。
 琉球大学検査部のホームページ拝見させていただきました。とてもよく出来たホームページだと思います。管理されている方は検査技師の方でしょうか??? 内容が豊富で驚きました。これからもアクセスしたいと思い, お気に入りに登録しました。これからもよろしくお願いいたします。


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