04/07/14
■ 院内感染の定義は???
【質問】
 先日の院内感染対策委員会で質問がありましたが, 限られた病棟からMRSAが多く検出しているようでもないし, 病院全体の検出数も大体平均的です。ということで, MRSA検出はあっても院内感染とはいえないとか回答していました。しかし, 院内感染はどこの病院でも起こっていると考えられます。アウトブレークしていないだけなのではないでしょうか。今後, MRSAをはじめ, メタロβラクタマーゼ産生菌などが院内感染だとされる条件があるのでしょうか??? 入院から何日経過とか, 同じ病棟から何回検出されたとかです。宜しくお願い致します。

【回答】
 まず大きな誤解があるようです。院内感染の定義は・・・“感染症の診断・治療を目的として来院していないヒト (患者・付き添い・出入りの業者, 病院従業員など) が, 病院内で感染した場合, これらすべてが院内感染に該当します”。微生物の種類 (MRSAや耐性菌など) で院内感染が定義される訳ではなく, どこで感染したのかで定義されます。その意味から, 院内感染は「市中感染」と対比して使われます。MRSAも既に, 幼稚園など, 医療機関ではないところで感染が拡がっています (市中感染として)。また外因性感染のみならず, 院内感染には“内因性感染”も含まれます。白血病や糖尿病の患者さんが自らの口腔内にもつ常在菌で感染症を発症した場合も院内感染に該当します。そのように考えると, 病院環境では毎日のように院内感染が観察される筈です。院内感染とアウトブレイク (outbreak: 流行) を意識して使い分けてください。同じものではありません。病院内で発生したアウトブレイクは非常に大きな問題となります。

 入院してからどの程度の期間, 経過したものを院内感染とするかは, それぞれの施設の決定事項です。結核とインフルエンザを同列に並べる訳にはいかないですし, それぞれの施設の熱意も影響します。同じように, どの程度の頻度で同じ微生物が検出された場合 (clusterした場合) を院内感染 (むしろアウトブレイク) に定義するかも施設が独自にきめることだと考えます。

(琉球大学・山根 誠久)


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