03/06/18
■ 飲料水の細菌検査に関する質問, ふたつ
【質問】
 はじめまして。飲料メーカーで品質管理の仕事をしております。ふたつ, 質問があります。

(1) 水道法で一般細菌数測定の際, 判定時間が24時間と短いのは (食品ですと通常48時間と認識しております), 何か特定の細菌を判定する為なのでしょうか??? (保健所に問い合わせたのですが, 不明とのことでしたので質問させて頂きました)

(2) NGKG培地について
1. セレウス菌が生育した場合, 培地がオレンジ色から濃ピンク色に変化するのは, セレウス菌のどのような作用によるものなのでしょうか。
2. 同じBacillus属であるのに, B. subtilis の生育が抑制されるのはどのようなメカニズムなのでしょうか??? 回答をよろしくお願い致します。

【回答】
 (1) 水道法で一般細菌数測定の際, 判定時間が24時間と短いのはなぜ???
 水道水の水質に関しては「水道法第4条」に定められ, 水質基準に関する省令で検査法等が規定されています。この内容は (社) 日本水道協会の「上水試験方法2001年版」に定義, 検査法, 試料の採取と保存, 試薬, 器具, 装置, 操作が具体的に記載されています。このうち飲用水の一般細菌および大腸菌群検査は残存量指標であり,「標準寒天を用い36±1℃, 24±2時間培養した時, 培地に集落を形成する全ての菌をいう」と定義されています。食品や他の物品と違い厳密な消毒措置で供給される飲料水は, 原則として生菌は存在しない訳であり, 何らかの不備 (消毒薬の供給不足など) が生じたとしても24時間培養で検出できる大腸菌群を対象として監視することで十分把握できるとした事前調査により制定されたようです。故に, 最初から世代時間の異なる各種細菌が存在することが明らかな食品検査とは別に制定された訳であり, 労力, 費用, 時間を考慮したうえで, 各種部門の条件の最大公約数から生みだされていくのでしょう。ただし, 水道水でも長期間放置後の初水からは多量の細菌が検出されますし, 一晩未使用の蛇口尖端にはいろんな微生物が付着しますので, 使用に際してはしばらく流してから利用することが大切です。

(2) NGKG培地でのBacillus cereus菌株の発育性状について
 NGKG (NaCl−Glycine−Kim and Goopfert) 培地には[ペプトン, 酵母エキス, 塩化ナトリウム, グリシン, 硫酸ポリミキシンB, フェノールレッド, 卵黄液, 寒天]が含まれています。この成分のうち硫酸ポリミキシンBは培地1,000 mlあたり50,000単位含有されており, 多くの細菌の発育を抑制します。ただし硫酸ポリミキシンB「耐性」のBacillus cereusは3〜5 mmの扁平, 白色で光沢のない集落として発育します。また, 卵黄反応 (レシチナーゼ) により培地が白濁し, さらに旺盛な発育による代謝産物 (アンモニアなど) の作用により集落周囲がアルカリ化となりフェノールレッド (pH 6.8〜8.4領域) が橙色〜赤色に変化する訳です。Bacillus cereus選択分離を目的とした同様の培地としては, マンニットを加えたMYP (Mannitol Yolk Polymyxin agar) も古くから知られています。

(大手前病院・山中喜代治)

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