04/08/03
■ 陰性の定義は・・・
【質問】
 私は某食品メーカーで品質管理をしております。自主検査も行っておりますが, とある方から「陰性というのは, ゼロと解釈してよいのか???」と聞かれました。定性試験では, 結果の欄に「陰性・陽性」と記入するのが一般的であり, 私の解釈としては, 調べた菌がゼロというより, 反応がなかったととらえております。陰性の定義について教えて下さい。宜しくお願い致します。

【回答】
 質問の趣旨は・・・試料を培養したけど, 菌の発育がなくて「陰性」と報告した・・・ところが, 依頼者より“陰性の定義”を尋ねられた・・・と理解しました。

まず, 定性試験でも, 定量試験でも, 必ず“最少検出限界”があることを認識してください。100 mlの水があります。この水から0.01 ml採取して寒天培地に塗って培養したら菌コロニーはひとつも出現しなかった。この場合の最少検出限界は1個/0.01 ml, すなわち100個/mlです。この濃度未満の菌濃度であれば, 「陰性」と判定されます。この「陰性」の意味するところを正確に表現すると・・・“この水には100個/ml以上の細菌は含まれていない”・・・ ゼロではありません。理論的には99個/mlの細菌を含むかもしれません。しかし, この100 mlの水, 全量を遠心して, その沈査に液体培地を加えて培養した場合には, その最少検出限界は1個/100 ml, すなわち0.01個/mlとなります。ここで理解して欲しいのは, 陰性の定義は検査方法で異なるということです。検査方法によって, 陰性の定義が異なるという原則はすべての検査にあてはまります。顕微鏡で直接, 試料を観察しても細菌は見えなかったのに, 培養したら細菌が検出されたという現象は, ふたつの検査方法の最少検出限界が異なるからです。最少検出限界が異なれば, 陰性の意味するところも異なります。

(琉球大学・山根 誠久)


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