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【質問】
IVH挿入中の患者には点滴ルートにフィルターを装着していますが, 輸液によってフィルターを通すものと通さないものがあります。人それぞれに理解度が違い「高カロリー輸液だけ通す」という人もあれば「気泡の混入とかもありえるからすべて通す」という人もいます。抗生剤や高濃度のブドウ糖などフィルターを通りにくいものはフィルターよりも体側に三方活栓を付けてそこから注入しています。実際のところ,
フィルターを通す薬剤の基準やフィルターの使用基準などあるのでしょうか???
【回答】
「輸液フィルターを通したほうがいい薬剤と, そうでない薬剤があるのか???」という御質問ですが,
回答としては, “輸液フィルターの孔径 (0.2 μm) より粒子が大きい薬剤やフィルターに吸着する薬剤を使用する時は避ける”ということです。
(1) 輸液フィルター禁忌薬剤
・ 乳化剤: イントラリピッド〔脂肪乳化剤〕, リプル〔血管拡張薬〕, ロピオン〔鎮痛薬〕
・ エマルジョン系薬剤: ファンギゾン〔抗生物質〕
・ 血液製剤: アルブミン製剤, グロブリン製剤
・ その他: サンラビン〔抗悪性腫瘍薬〕
(2) フィルター (輸液ボトルも含む) に吸着する薬剤
インスリン製剤, ミリスロール〔血管拡張薬〕, セルシン〔抗不安薬〕, オンコビン〔抗悪性腫瘍薬〕,
ジゴシン〔強心薬〕, コスメゲン〔抗悪性腫瘍薬〕など
(3) フィルター自体を変性させる薬剤
ラステット, ペプシド〔抗悪性腫瘍薬〕
(4) 投与量が少ない薬剤222
投与する輸液中の薬剤濃度が5μg/ml以下, あるいは1日の総投与量が5 mg以下の場合〔G-CSF製剤
(グラン, ノイトロジン, ノイアップなど)〕は, フィルターの通過の可否が確認できてから使用すること
(米国委員会[NCCLVP]基準)。
◆ 使用時の注意事項2薬
・ 吸着を起こす薬剤やフィルターを変性させる薬剤の場合は, 患者側に近いフィルターより下流のゴム栓より刺針して注入する。
・ 脂肪乳剤を含んだ輸液は, 脂肪乳化剤用フィルター孔径1.2 μmを使用する。
※1.2 μmフィルターでは沈殿物, 脂肪の凝集塊の除去, カンジダ・アルビカンスなどの比較的大きい微生物の除去に有用であり,
静脈炎の防止につながる
・ 中心静脈ラインから化学療法を施行されている状況下では, 薬剤配合変化による沈殿物の除去目的にフィルターは有効であるといわれている
(FDA―米国食品医薬品局やASPENガイドラインによる奨励)。
(琉球大学・糸嶺 達)
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