|
【質問】
副鼻腔, 扁桃腺に関わる術後感染予防の抗生剤についてご教授下さい。当院耳鼻科では以前術後感染予防の目的でフルマリン1g注が6日投与されていました。現在では清潔,
準清潔手術の場合はパンスポリン1gキット3日投与に変更されています。ただし,
副鼻腔, 扁桃腺に関わる手術に対しては4日以上の投与でないと心配という意見があります。手術部位による抗生剤の使い分けで注意点がございましたらご教授下さい。
【回答】
第一に, JARMAMの質問箱の中の回答に抗菌薬の使い分けを明記してありますので下記の項目を御一読下さい。
・ 耳鼻科領域での術後感染予防の抗生剤投与について
以下に手術部位による抗生剤の使い分けに関します基本的な注意点を説明します。
1. 手術前の外来検査にて手術部位周辺および術式により汚染されると思われる部位の常在菌検査を実施し病原菌や耐性菌の有無を把握しておく。
2. 耐性菌が確認されない場合は, 患者基本情報と感染情報を考慮し手術部位への移行性が低度〜中等度移行性の「発症阻止薬」を選択する。
3. 耐性菌が確認された場合は, 耐性菌に抗菌力を有し移行性が低度〜中等度移行性の発症阻止薬に変更するか,
または2剤を併用する。
4. 感染症が確認されたら, 移行性・抗菌効果に優れた「治療薬」に変更する。
5. 自施設内での副鼻腔, 扁桃腺に関わる手術後の感染症の有無を整理し,
現在使用している発症阻止薬の効果を検証する。発症阻止薬は定期的 (1〜2ヶ月)に変更すると同時に,
この間の細菌検査データをまとめ阻止効果を検証する。投薬期間の長短については,
このデータを基に決めます。また, 慣れた医師の手術と不慣れな医師の術後では,
同一対策を講じても効果が異なるため再評価する際にはこの事も考慮して下さい。
(大阪大学・浅利 誠志)
|