02/08/29
■ 耳鼻科外来の消毒について
【質問】
 看護師です。初歩的な質問でお恥ずかしいのですが, 先週から開業耳鼻科外来に勤務しはじめ, とまどいがあり, 質問させていただきます。

 外来ではどんな既往疾患感染症を持っているか分からない患者さんを毎日診察しています。オートクレーブにて滅菌出来る器具については実施していますが, 現クリニックでは患者に直接使うガラス器具やプラスチックの吸入器具などの消毒がほとんどされていないのが現状です。そこでオートクレーブに入れられない物品についての扱い方で疑問があるのです。一度使用した器具の洗浄〜消毒までの手順ですが, 現在使用器具を家庭用洗剤の薄めた液につけておき, しばらくして汚れた器具を洗浄するためのゴム手袋で再度洗剤で器具を洗い, 乾燥させています。これを私, ピューラックッスで消毒する方法に変えようと考えております。開院半年と間もないため, 器具の数に限りがあり, 効率よい消毒を教えていただきたいのです。

 使用した器具をそのまま消毒薬に入れ, しばらく浸けた後に, 家庭用洗剤で洗浄する意味はありますか??? 先に家庭用洗剤で洗浄後, 消毒薬に浸けた方が効率が良い気がするのですが。

 洗剤にて洗浄せず, 使用器具を消毒液内で洗浄する場合は, その都度薬液を交換する必要があるのでしょうか???

 消毒した器具を取り出すのには, 手荒れなどの問題があるため, 手袋使用にしたほうが良いのでしょうが, 勿論専用の手袋にするべきではと考えていますが, それほど気にする必要はないのでしょうか???

 耳鼻科は, 外科とは違い, 準清潔と言う状態は認識しておりますが, 私が無意味に神経質なのかもしれません。患者さんや働く者にも良い環境をと思い質問させていただきました。どうかよろしくお願いします。

【回答】
1. 基本的な注意事項
 耳鼻科領域における感染症は, 結核菌、MRSAなどの耐性菌, 真菌およびウイルス感染症など, すべての感染症が消毒対象となります。このためすべての微生物を消毒できる消毒剤の選択が重要です。・・中途半端な消毒ではいけません。

2. 消毒の基本
 明らかに唾液, 血液, 膿などが付着した使用後の医療器具は, 流水にて予備洗浄を行ってから, 蛋白分解酵素を含んだ医療用の洗剤に浸漬し, 蛋白成分を完全に除去することが大切です。一般家庭用の洗剤では付着した蛋白成分は除去できません。

3. ガラス器具, プラスティック器具のピューラックッス (次亜塩素酸ソ−ダ) による消毒について
 家庭用品のガラス製品やプラスティック類の消毒でしたら次亜塩素酸ソーダでいいと思いますが, 感染の伝播の可能性の高い医療器具類には不適切です。真菌, ウイルスには次亜塩素酸ソーダは有効ですが, 耳鼻科で感染事例のある結核菌やMRSAなどの耐性菌には不適切です。 

4. 適切な消毒剤について
 短時間で最も確実な消毒効果が得られるのは, 過酢酸またはステリハイドです。低刺激という観点からは過酢酸が推奨されます。

 (1) 過酢酸 (サラヤ株: アセサイド6%)
 予備洗浄が十分でしたら, 5〜10分で優れた消毒効果が得られ, ステリハイドに比べて低刺激です。有効濃度を測定する試験紙が別売されており, 使用頻度にもよりますが比較的長期間, 消毒液を使用することが可能です。材質を確認し換気に留意して下さい。

 (2) ステリハイド
過酢酸と同等の消毒効果が得られますが, やや時間を必要とすることと強い刺激があります。有効濃度を測定する試験紙が別売されており, 使用頻度にもよりますが比較的長期間, 消毒液を使用することが可能です。材質を確認し換気に留意して下さい。

(大阪大学・浅利誠志)

[戻る]