03/09/22
■ カビ毒による食中毒の位置付け
【質問】
 食中毒の分類について教えてください。書籍を見ると, カビ毒による食中毒は「化学性食中毒」に入っていますが, カビは微生物であり, そこからカビ毒を産生すると考えると, 「細菌性の毒素産生型」になるのではないのでしょうか??? それともカビは細菌ではないことから, このような分類になるのでしょうか??? 基本的なことで申し訳ありませんが, 教えて下さいますよう, よろしくお願いします。食品に関わる微生物検査に携わっています。

【回答】
 従来,赤痢やコレラなどの感染症は食中毒と区別されていましたが, 1999年4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 (感染症新法) において,病因物質の種別にかかわらず, 飲食に起因する健康障害は食中毒としても取り扱われれようになりました。その分類については, やや曖昧なところがありますが, 原因食品中に含まれる病因の種類により, 細菌性食中毒, 自然毒による食中毒,化学物質による食中毒に大別されています。動植物などが本来保有している有毒成分および食物連鎖を通して取り込まれた毒物を自然毒といい, ご質問のカビ毒は, カビの産生する二次代謝産物マイコトキシンが人体に悪影響を及ぼすもので, 通常, フグ毒, 植物毒あるいは毒キノコなどとともに自然毒に分類されます。カビのほとんどは土壌由来のもので, 簡単に大気中に散じ, そのため食物や飼料のマイコトキシン汚染をひき起こす要因は数多く, たとえば, 高温, 多湿, 土壌の状態, 貯蔵の不備などが挙げられます。細菌性食中毒は, 感染型, 毒素型ともに, 何らかの原因で食品中に増殖した細菌の摂取によって中毒症状を起こすもので, 微生物学上の分類のみでなく, 原因物質の汚染の拡がり方も異なり, 別分類になるものと考えられます。また, 化学性食中毒は文字通り砒素や水銀,カドミウムなどの化学物質が飲料水や食物中に入ってしまうことで発生するもので, 別分類とするのが妥当と思われます。

(近畿大学・山住 俊晃)

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