03/04/08
■ 菌株, 特にカビの保存方法について
【質問】
 はじめてご質問させていただきます。私は海藻を取り扱う食品会社に勤務する者です。いつも, この質問箱を読ませていただいて, 大変わかりやすく非常に参考になり助けていただいています。

 現在, 弊社では抗菌試験を行うことを検討していますが, その試験菌の保存法についてとても基本的なことなのですが, お伺いしたいことがありまして, ご連絡させていただきました。

私共の設備では危険度リスクの高い株を取り扱うことができません。そこで, 危険度の低い菌株を用いての抗菌試験を考えております。そこで候補の試験菌として枯草菌, パン酵母, カンジダ菌を検討しています。これらの菌株の学名と株番号はBacillus subtilis ATCC9372, Saccharomyces cerevisiae IFO203, Candida albicans ATCC10231です。さらに、現在危険度の程度がわからないために弊社で試験株として取り扱うことができるかどうか調査中のかび2種Aspergillus niger ATCC9642とMucor pusillus HUT1185があります。これら6種を試験菌候補として考えているのですが, これらの菌の保存法を教えていただきたいと思います。弊社の設備では−20度と−80度のディープフリーザーがあるのですが, これらによる凍結保存法で6種の菌株とも問題はないのでしょうか??? また菌の保護のためにスキムミルクやグリセリン, DMSOなどの分散剤を入れますが, その分散剤はどの菌株に対してどれを選択しても構わないのでしょうか??? 特にかびの保存法が不安です。種によって適応できるものと適応できないものがあるとうかがったため, 学名, 株番号まで記載させていただきました。どうか御回答いただきますよう宜しくお願い致します。

【回答】
 御質問の菌種の危険度はすべてレベル2止まりですが,糸状菌,とくにAspergillus  niger の分生子 (胞子) は飛散して実験室汚染の原因となり易いので気をつけて下さい。実験室汚染を少なくするために,釣菌は白金耳のループ内を滅菌水で満たし, その中に分生子を浮かばせるようにする,また釣菌量を少なめにするなどの配慮をされると良いです。

 保存法は,細菌および酵母に関しては凍結保存で充分です。分散剤は比較したことはありませんが,大差ないのではと思われます。糸状菌も凍結保存する場合は寒天培地に発育した菌叢を4〜5 mmに切り取って10%DMSOを含む培養液に浸し7℃に30分放置して浸透後,毎分1℃で―30℃〜―40℃までゆっくり下げ,以後一気に―80℃まで下げて保存し,復元は40℃の恒温槽中で急速に行うと良いとされています (宮治 他: 病原真菌)。その他,糸状菌の保存法として,グルコース濃度を1%に落としたサブロー寒天斜面培地に培養後,集落を覆うように乾熱滅菌した流動パラフィンを重層して保存する方法,スクリューキャップ付き試験管に蒸留水をいれて滅菌し,その中に発育した集落を寒天ごと幾つか切り取っていれ,密栓して保存。用に応じ, 寒天ブロックを取りだして復元させる蒸留水保存法などがあります。保存可能期間は大まかにパラフィン重層法1〜2年,蒸留水保存法4〜10年とされています。初めての菌種を扱う場合は複数の保存法を併用した方が良いと思います。

(北里大学・阿部美知子)

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