02/06/04
■ 界面活性剤 (食品添加物) に混入する細菌のDNA検出
【質問】
遺伝子操作など最近の新技術にまったく疎いのですが, この間新聞で食品業界ではDNAを用いた菌検査で製品の出荷前に菌の有無をチェックしていると出ていました。界面活性剤の会社に勤めるものなのですが, やはり出荷前に菌検査は欠かせません。現在は培養法です。培養法に比べ数時間で結果が出るのが 特徴とのことですが,
(1) 界面活性剤の製品検査にも使えるのですか???
(2) どんな菌が入り込んでいるのかわかるのは菌が検出された後だと思うのですが, 菌の種類が特定できない場合にでも有効なのでしょうか??? また複数の菌検査を同時に行えるのですか???
(3) 培養法で3日間培養しての菌検査で万一陽性になってもせいぜい1 gram中に1〜5個程度なのですが, この程度の検査にもすぐに検査結果が判定できるものなのでしょうか???
素人のくだらない質問で申し訳ありませんがよろしくお願いします

【回答】
 食品業界での「DNAを用いた菌検査で製品の出荷前に菌の有無をチェック」という記事については回答者は知りませんので詳しい状況は判りかねます。つまり, 何の目的で, どんな食品について, どんな細菌の有無をチェックしていたのか判りません。と言うのは, DNAを用いた手法では, 細菌の生死に関しての情報を得ることは出来ません。極端な例としては, 食品中から「コレラ菌」「赤痢菌」「腸炎ビブリオ菌」等々のDNAが検出されたとしても, これらの菌種がすべて死滅しているのか, または生菌なのかはDNAを検出しても判らないのです。上述の菌種は, 感染性を惹起したり, 感染型食中毒の原因菌種として知られているものですが, 菌が死滅さえしていれば全く問題にはならないはずです。
さて, 
 (1) ですが, 界面活性剤の中の特定のバクテリアのDNAを検索することは可能なはずだと思います。しかし, 界面活性剤は菌の生死とは無関係に特定のバクテリアのDNAが検出されてはいけないことになっているのでしょうか??? また, 製品中に菌の生死に関わらず, バクテリアのDNAが混在していてはいけないものなのでしょうか??? どんな種類の界面活性剤で, どんな用途に用いられる界面活性剤なのでしょうか???  質問の文面からは判りません。したがって, この質問についてはお応えすることが出来ません。

(2) 特定の菌種を想定して検索することになりますから, その検索対象に設定した菌種のDNAの有無についての情報は得られるはずです。勿論, 複数菌種でも対象に設定して検索すれば何菌種でも可能なはずです。しかし, 質問に「菌の種類が特定できない場合にでも有効なのでしょうか???」とありますが, 何が有効なのかを質問しているのか, 回答者には伝わってきません。

(3) ですが、「3日間培養しての菌検査で万一陽性になってもせいぜい1 gram 中に1〜5個程度」と記されていますので, 無菌試験ではないのですね。定量培養をされているのですね。だとすると, どんな方法で定量培養されているのでしょうか??? また, 界面活性剤には, ある一定菌数以上の生菌が混在していると製品として「不適」と判断されるのでしょうか??? その菌数の許容範囲が規定されているのでしょうか??? 私は不勉強なのか知りませんので判らないのですが, DNAの検索では, 「1 gram中に1〜5個程度」の目的とする菌種が存在していれば, 理論的には検索可能だと思います。

 質問者の意図する質問内容と私の回答が噛み合っていないかも知れません。「やはり出荷前に菌検査は欠かせません。現在は培養法です。」と質問者は記されていますが, 界面活性剤の菌検査は, どこで規定している, どんな基準をクリア−するために, どんな手法で, 現在行われているのか, といった情報に加えて, 質問内容をもう少し整理して何を知りたいのかを明確にしてから質問していただければと思います。
 質問者にとって, まったく的外れの回答だとしたら本当に申し訳なく思いますので。

(信州大学・川上 由行)

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