03/01/07
■ 空気感染の飛沫核について
【質問】
(1) 麻疹, 水痘ウイルス感染は空気感染です。結核菌の大きさは1ミクロン内外とN95マスクの0.3ミクロン粒子の除去で理解できますが, これらウイルスの飛沫核はどの程度の大きさでしょうか。N95マスクはこれらウイルス空気感染の予防に有効なのでしょうか。

(2) レジオネラも空気感染ですが, アメーバなどのなかに生息しているこれらの菌がどうやって5ミクロン以下になりえて, 空気感染するかよく理解できません。それともレジオネラの場合は5ミクロン以上でも空気感染しているのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) N95マスクのウイルス感染に対する予防効果
 麻疹ウイルス感染に対する職員感染予防対策は欧米ではワクチンで対応すべきと強く勧告を行っており, マスクで予防する概念がないのでこれに関する文献はほぼ皆無であるのが現状です。本邦でも同様ですが, 日本環境感染学会監修の「病院感染防止マニュアル」では“麻疹に対する免疫能を有しない職員の麻疹患者の病室への入室する場合にはN95マスクを着用するのが望ましい”との記載があります。しかし防御効果の根拠となる文献については記載がありません。麻疹の高い感染率と成人麻疹の重症化が問題となっている現状を鑑みると, CDCの勧告にありますように, 平時から医療従事者の麻疹抗体価の調査や免疫能のない職員へワクチン接種を勧奨することが, 病院感染対策として重要と思われます。これは麻疹に対する免疫能ない職員が麻疹に罹患して入院患者に感染させることを防ぐためにもぜひ取り入れるべき対策と考えます。

(2) レジオネラの「空気感染」について
 1996年米国バージニア州で発生した大規模な集団感染の疫学的調査で明らかとなったことは, 感染源となった展示品の浴槽のすぐ近くに30分以上いたヒトのみから患者が発生しております。このことからもわかるようにレジオネラは多量の菌がエアロゾルとなって吸い込まれる場合 (宿主因子も重要ですが) に発症すると報告されています。どの程度の時間, 空気中に漂うか不明ですが, 0.5〜1.0μmの範囲の粒子のみが終末細気管支, 肺胞領域に達することを考えますと, 物理的に起こされたエアロゾル中の状態ではアメーバなどの共生原虫から飛び出した菌が大多数であると推定されます。(レジオネラは共生原虫の中で増殖後, その原虫を破壊して他の未感染の原虫へと増殖の場を求めて移動します)

 欧米のガイドラインでは, レジオネラは空気感染のカテゴリには入っておりません。またヒトからヒトへの直接感染は証明されておりません。そのためCDCのガイドラインでも隔離の適応疾患から除外されております。これらのことから麻疹, 水痘, 結核などの空気感染とレジオネラは異なると思います。

(琉球大学・健山 正男)

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