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【質問】
私の勤めている病院は一般病棟49床の内科病院です。このたび, 感染委員会を再編成し,
マニュアルの見直し, 勉強会など活動をし始めています。院長より「感染レポート」作成を言われたのですが,
どのように作ればいいのか見当もつきません。何かマニュアルのようなものがあるのでしょうか???
ちなみに, 細菌培養検査は月3〜4件ほどで, MRSA感染者がいない月のほうが多いくらいです。
また, 「感染レポート」と「感染者報告書」は同じものなのでしょうか???
【回答】
1. 感染レポートの作成について
感染症新法で定められています1〜4類感染症の「全数把握の感染症」については,
報告の様式が定められており, 保健所に問い合わせたら用紙は入手できます。一方,
院内における感染レポートは自施設内で話しあって決めますが, ポイントは耐性菌の種類を何種類まで把握するかです。
2. 通常の病院がターゲットとしている耐性菌報告書
VRE (バンコマイシン耐性腸球菌), MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),
PRSP (ペニシリン耐性肺炎球菌), MDRP (多剤耐性緑膿菌) の4菌種が最も重要な耐性菌です。VREは新法で定められている全数把握の菌種ですので,
すべての病院の医師は各都道府県の衛生部に報告しなければいけません。残りの3菌種は基幹定点病院が届け出る耐性菌ですので,
ここまでの菌種を最低限の目標にされたらいかがでしょうか?
3. ゆとりがある場合の感染レポート
感染症患者が少ないのでしたら, 感染症の原因菌と診断した菌種をすべて病院内のレポートの対象にされたらよいと思います。中規模病院,
大学病院では通常, すべての菌種を対象に統計処理を行っています。
4. 病院内の報告書について
報告書に記載する事項は, 患者基本情報 (患者氏名: イニシャル, 年齢,
性別, 病棟, 主治医名, 患者ID, 検査材料, 検査日) と感染情報 (保菌か感染の区別,
治療効果など) を記載します。さらに, 週別, 月別, 材料別などに整理して追加報告します。
5. 感染レポートと感染者報告書について
通常は別に扱います。
感染者報告書は, 主治医が「保菌と診断した時点」で前記4つの内容について一次報告し,
さらに「感染症と診断した時点」で追加報告します。一方, 感染レポートは上記4つの項目を週,
月毎, 年別にまとめたデータをグラフや表などを用いて報告します。
6. 院内感染対策テキストについて: 参考資料
[概要について]
・院内感染対策テキスト: 日本感染症学会・厚生省編集 (へるす出版) 3,900円
・病院感染対策ガイドライン: 編集 国立大学医学部附属病院感染対策協議会
(事務局代表 名古屋大学 大田美智男) ・・・値段の記載なし
[MRSA+感染症新法+防止対策法について]
・ MRSA消毒・除菌・治療: 浅利誠志著 (最新医学社) 2,500円
(大阪大学・浅利誠志)
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