■ 監視培養における検査の頻度と意義 | |
【質問】私は, ある大学病院の細菌検査室で働いています。宜しくお願いします。検体についてなんですけれども,
私の病院では監視培養としてだと思うのですが, ある病棟では, 週に2回決まった曜日に検体が提出されます。種類としては,
咽頭・喀痰・胃液・糞便・尿の5つです。週に2回なので結果が出るまえに次の検体が来ることも多々あります。このような検体の提出期間は意味があるのでしょうか??
それと, 同じ病棟で, 月・木に提出するのですが, 例えば土曜日に入室された時に入室時として(MRSAの有無を見てると思う)1セット提出します。その場合受付していないので月曜日に受付をします。その時に月曜日の分としてまた, 1セット提出されます。同時に検査を始めていくわけですが, その時にDr.に「入室時でもし, 何か出ていて月曜日の最新の方の検体が陰性であれば, 感受性はよろしいですよね」と言うとDr.は入室時の分も感受性が必要であると言われます。 個人的にはいらないんじゃないかと思うのですが, どうでしょうか??コスト的にもかなり無駄であるとおもうのですが・・・提出の日も入室時が土曜日であれば次は木曜日でいいんじゃないかとおもいます。 監視培養としては, どれぐらいの期間が一般的なのでしょうか?? 大学病院のため, 研修医が多く, 月・木と決まっているから出しているみたいな所もあると思うのです。コスト意識に欠けているように思います。ひどい時には月曜日のオーダーのラベルで水曜日に提出し, 木曜日は木曜日のラベルで提出という場合もあります。どうですか?? このような検体の提出は?? 長々とすみません。最後はグチのようになりましたが教えてください。もし必要なら自分自身納得できますし, 必要ないのなら先生にもビシッと言える様な説明がしたいのです。宜しく, お願いします。 【回答】監視培養についてですが, はっきりとした必要性を検証した報告はないと思います。入院患者を一律に咽頭・喀痰・胃液・糞便・尿などの細菌培養を行うことの目的は, 主治医の気持ちとしてはおそらく, (1)MRSAなどの耐性菌のスクリーニングとして, (2) 何か重篤な基礎疾患があって感染症発症時に迅速に抗菌薬を投与する場合のために, のいずれかでしょう。まず(1)の場合ですが, すべての患者に一律に行うことはコストパフォーマンスからいって承認しかねます。あえて行うとすれば, 以前に排菌していた患者が対象だとおもいます。その場合でも定期的にくり返し行う必要はありません。次に(2)の場合ですが, 監視培養で培養された細菌と感染症の原因菌との関連についても明らかではありません。検査技師であれば分かると思うのですが, 咽頭・喀痰・胃液・糞便・尿などを培養すれば, 様々な細菌が培養されるはずで, そのうちどれが感染症の原因菌の可能性ありと判定すればよいのか, 判断できないと思います。臓器移植患者での細菌と真菌の監視培養の必要性に関してのレビューがあります。そこでは, 腎または膵移植患者での定期的な尿培養, 肺移植患者での喀痰培養, あるいは移植後注意すべき時期のカンジダやVREの監視培養が勧められていますが, それ以外の監視培養はその必要性を認めていません。論文はClin Infect Dis 33: Suppl 1. S22〜S25 ですので参考にして下さい。臓器移植患者においてそのように考えられているようですので, それ以外の患者ではさらにその必要性は低いと思います。 (京都大学・一山 智)
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