02/03/19
■ 結核菌の検鏡検査に必要な設備・備品
【質問】
 突然で申し訳ありませんが, 教えていただきたいことがあります。
当院では細菌検査を外部に委託していますが, “結核疑い”のある場合, 鏡検だけでも院内でやってほしいと言う希望があります。現状, 細菌検査用の設備はまったくありませんが, このような場所で鏡検は可能でしょうか? また不可能な場合は, 最低どのような設備が必要か教えて頂けないでしょうか? 法律面, 安全面, 双方を気にしています。よろしくお願いいたします。

【回答】
 細菌検査専属の技師がいる病院であっても, 検査の外注化を推進する経営者が増えており, 国の姿勢もまたこれを擁護しようとしております。その中にあって, 院内での検査を重視し, 検査を依頼して来る貴院の在り方に敬意を表します。できるだけの対応を講じてあげてください。とは言うものの限られた人数で至急検査をどこまでやれるかが問題でしょう。
 本来, 微生物の取り扱い時には安全基準レベルに沿った対応が必要であり, 特に結核菌などの病原微生物取り扱いに関しては (1) 独立空調で陰圧とし, 空気は一定方向に換気すること, (2) 操作は安全キャビネットを利用すること, (3) 使用済み器材類はオートクレーブ処理すること, (4) 汚染時の消毒, エロゾール飛散時の対応を徹底すること, (5) 定期的健康診断, ツベルクリン検査を受けること, などが指示されています。ただし, 厳密に法律で規定されているものではなく, 行政指導により各施設に任されているのが現状です。
 そのような中にあって, 最近の結核菌検査は濃縮検体を用い, 少しでも検出率を上げるための工夫が推奨されております。ただし, この方法を実行するためには設備の充実と費用がかかることから, 中規模以上の施設で徐々に整えられているのが現状です。ですから, 検出率は若干落ちるものの, 今でも直接塗抹標本の鏡検法が多くの施設で利用されております。ごく簡単に両方法を別表に示し, 比較してみました。
 たぶん大掛かりな検査設備は整えられそうにないと推察しますので, 若干の検出感度は劣ることを臨床にわかってもらったうえで, 直接塗抹法による鏡検をやられたらいかがでしょうか。検査に際してはディスポの白金耳を利用し, 注意深く行えば一般の実験台上でも十分作業が行えます。しかし安全性を考慮し(1) 検体の取り扱いはN95マスク, 予防衣, ディスポの手袋を着用すること, (2) 周囲になるべく飛散させない場所で行うこと, (3) 検査後はフェノール系消毒薬を散布すること, などに留意することが大切です。
第27回微生物検査研修会資料 (日臨技, 2001年) を参考にしてください。

抗酸菌塗抹検査法(直接法と集菌法)の比較


 
項 目
直接法
集菌法
 

方 法
(1) 検体の1白金耳量をスライドグラスに塗抹
(2) 固定後, チール・ネールゼン法で染色
(3) 光学顕微鏡で鏡検
(1) 喀痰と融解酵素を混ぜ均質化する
(2) NALC-NAOH遠心法で集菌操作
(3) 塗抹標本を作製し染色
(4) 光学顕微鏡で鏡検
 

準備器材
(1) ディスポの白金耳
(2) スライドグラス
(3) 染色液
(4) バーナー
(5) 光学顕微鏡
(1) ディスポの白金耳
(2) スライドグラス
(3) 染色液
(4) バーナー
(5) 光学顕微鏡
(6) 喀痰融解酵素液と滅菌スピッツ
(7) NALC-NaOH処理試薬
(8) 安全キャビネット
(9) 高速安全遠心機
操作性
単純で処理しやすい 繁雑で手間がかかる
検査時間
短時間(10_15分) 60_90
費 用
安価 設備に多額が必要
検出感度
10^4ml以上 10^2ml以上
鏡 検
ばらつきがあり, 精度は低い 定量可能で高精度
(大手前病院・山中喜代治)

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