■ 結核予防法に基づく強制隔離入院について | |
【質問】
私の明治三十九年生れ, 満九十七歳になる母は, ホーム・ドクターでの喀痰検査で“結核の疑い”と謂うことで, 市の指定医療機関への「強制隔離入院」をさせられました。13日間の入院で「疑い」が晴れ, 退院しましたが, 諸検査費用はもとより, 入院費の他に差額室料まで個人負担と謂うことで徴収されました。隔離入院でありながら, 検査費用, 差額ベッド料まで徴収されるのは, はなはだ納得がいきませんし, 検査結果が出るまで13日もかかるのは理解出来ません。結核予防法に基づく隔離入院の法的強制力発生の時点, 即ち「結核の疑い」で強制力が発生するのかどうかご教示下されたくお願い申し上げます。 【回答】
結核 (結核の疑いを含む) 患者を診断した医師は, 直ちにその旨を患者の住所を管轄する保健所に届け, 申請書を提出して結核予防法の適用を審査してもらいます。結核予防法第35条の適用を受けると, 患者さんは結核菌を排出しており, 周りのヒトにそれを移さないように強制的な隔離をします。その費用は入院費を含め, 原則, 全額が公費で負担されます。他方, 第34条の適用を受けると, この場合には周りのヒトに結核菌を移す可能性は甚だ低いとされ, 結核の治療に係わる部分のみが公費で負担されます。費用負担という意味からすると, 強制隔離が必要か否か (公費負担の有無) を決定するのは入院した医療機関ではなく, 保健所での審査です。では, 貴方のお母さんのように, “結核の疑い”と診断され, 後で“結核ではない”と診断された場合ですが・・・通常, 担当医は, “結核の疑い”ということで, 抗結核薬を処方し(即刻, 強制隔離するくらいですから, 結核の診断には根拠があった筈です), 結核の精密な検査を進めます。と同時に, 保健所に申請書を提出します。後で“結核でない”と診断されても, 通常は結核予防法第34条の適用を受け, 処方された抗結核薬や必要な検査費用は公費負担となるようです (ただし, 審査結果は必ずしも予想できませんし, 担当医の判断とは違うこともあります)。是非, 入院された市の指定医療機関に照会してください・・・(1) 結核予防法の申請は保健所に提出したのか, (2) 提出したのなら, 審査の結果はどうだったのか。 それと, “結核ではない”と診断された場合には, 入院費を含め, 自己負担が発生します。ただ, 質問の内容からすると, “差額ベット料”の徴集には問題があると思います。差額ベッド料については, 患者の同意なしに徴収されることは認められないので,同意していないのであれば, 異議申し立てができます。ましてや,隔離の必要から差額ベッド (個室) を使用したのなら, これは医療機関側の“都合”と思われますので患者への請求はできません。“結核の隔離室と思われる部屋”での差額ベッド料の徴収はおかしいなぁと感じます。 (琉球大学・山根 誠久)
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