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【質問】
私は美容品などの開発をしている会社に勤めているものです。新製品の開発にあたり,
無菌試験を行うことになりました。しかし, 微生物に関しての知識がほとんどなく,
頭を抱えている毎日です。
そこでお伺いしたいのですが, SCD培地を使用して“嫌気性細菌の培養”はできないものなのでしょうか。もちろん,
チオグリコール酸培地・IIを使用すれば簡単なことなのですが, そうすると培養温度が違うためインキュベータが2台必要になりますし,
その分試料のロスも増えます。できることなら一種類の培地で細菌・真菌の両方を培養したいのですが,
良い方法はないでしょうか。
お力をお借りしたくメールさせていただきました。お忙しいところ誠に申し訳ありませんが,
よろしくお願いいたします。
【回答】
美容品の分野で使うSCD培地の使用経験がなく, どのような培地なのか,
またその組成がわかりませんが, 一般論から言えば, 多くの嫌気性菌はペプトン,
イーストエキス, 塩類, 糖が含まれていて, 十分還元された培地であれば発育してきます。通常の液体培地には,
これらの栄養素は含まれていると考えられるので, 栄養的には必要に応じて少しの添加物
(ヘミンなど) を加える程度でそれほど問題ではないように思われます。しかし液体培地で嫌気性菌を培養する上で大切なことは,
(1) 培地を十分還元して使用することと, (2) 検体接種時, そして接種後に, その培地をできるだけ酸素に触れさせずに嫌気性の環境に置いて培養するということです。もっとも理想的な方法には2つあります。ひとつは,
ガス噴射装置を使って, 炭酸ガスの噴射下, PRASのSCD培地を作製し, ガス噴射下で検体を接種することです。これをガス噴射法といいます。もうひとつは,
高圧滅菌した培地を冷却後, すぐ嫌気性グローブボックスの中に入れて, その後のすべての作業をその中で行うことです。これを嫌気性グローブボックス法といいます。このいずれかを使うことにより,
SCD培地を使用して嫌気性菌を培養したいというあなたの望みに一歩近づくことができます。しかし,
いずれの方法も, あなたの現在やっている方法よりはかなり煩雑で, 一定の訓練期間が必要となります。質問の内容から判断すると,
チオグリコレート培地を使って, 温度が異なるフラン器をもう一台準備して仕事をする方法をとる方がより現実的のような感じがしています。
(岐阜大学・渡邉 邦友)
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