■嫌気性菌のヒート・ショック処理について | |
【質問】
嫌気性菌のヒート・ショック処理について質問します。 現在, Propionibacterium freudenreichiiを用いた研究を行っているのですが, 継代していくにつれ, 菌の活性が落ち, 増殖しにくくなってしまいます。自分なりに調べたところ, ヒート・ショック処理を行い, 低活性菌を死滅させ, 活性菌だけ残った状態で継代するというものだったのですが, 微生物学への知見があまりなく, ヒート・ショック処理の操作 (温度などの条件) について見当がつきません。操作温度や時間などの目安となるものがありましたら御教示願います。 【回答】
菌の継代をくり返すと, 発育が悪くなってくるのはよく見られる現象ですね。そのような場合, よく指摘されるのは, 継代培養にはグルコースを含まない培地を使えということです。あなたが使用している培地の組成を見て, もし該当するなら, その点を考慮して, 培地を選び直して下さい。ところで, 菌を一度大量に培養して, それを適当な分散媒の中に浮遊させて作製した濃厚菌液を, 滅菌小バイアルに1 mlずつ無菌的に分注して, マイナス80℃に凍結保存しておいたものを, 実験の度に1本ずつ解凍して, それから菌をretrieveして使用する方法ではだめでしょうか??? さて, 御質問のヒート・ショックについてですが, 小生が時々行っているヒート・ショックとは, Clostridiumを扱う場合のものです。温度は80℃, 10分間をよく使いますが, それでダメなら60℃, 10分間でやります。これでやってみて下さい。熱に耐性の芽胞を刺激し, 増殖させるために行いますが, 無芽胞菌ではやったことはありません。しかし, やってみる価値はあるでしょう。ヒート・ショックする菌を増殖させた培地, あるいは浮遊させた液体培地の他に, それと同じサイズの試験管に同じ量の培地を入れたものを1本別に用意して, 温度計をさしこんで, 温浴中に入れて下さい。温度計が所定の温度になってから, 正確に10分間として下さい。状況がよくわからないので, 私が教えられることはこれだけです。 (岐阜大学・渡邉 邦友) |