03/03/31
■血液を介する感染微生物の消毒と針刺し事故
【質問】
 一般内科病棟に勤務する看護師です。今回の質問は, 血液感染であるHBV, HCV患者様で全身掻き傷があり, 出血もしているような状態で医療施設において入浴される場合, 入浴後どういった消毒が必要でしょうか???
あと, ATLのキャリアの患者さまが入院された場合針刺しにおける感染率はあまり高くないようなことは記載されている文献はあるのですが, 針刺し後の対応についての資料はあまりありません。感染マニュアルを見直す上で針刺し後の対応について参考となる文献はありますでしょうか???

【回答】
ふたつの質問共に考えさせられるものでしたが,国立大学医学部附属病院感染対策協議会の病院感染対策ガイドライン (以下ガイドラインと略) に沿ってお答えします。

“入浴後どういった消毒が必要か?”との質問ですが,消毒の対象として風呂場,リネン類などの環境と患者さん自身の全身掻き傷が想定されます。ガイドラインではHBV, HCV, HIVによって汚染された物の消毒法として,「床・壁など環境表面は,明らかな汚染がない場合, 通常院内で行われている清掃法でよい」「床・壁など環境表面に血液・体液などによる汚染が認められる場合は,消毒薬(76.9〜81.4%消毒用エタノールや0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液)でその部分の汚染を除去する」とあります。これにより,風呂場の床などについた血液はシャワー水などで流せばよいと思われますし,それで汚れが落ちにくい部分は消毒薬で除去すればよいと考えられます。

血液のついた患者さんのリネン類は,感染性リネン類として扱い,ビニール袋に封じ込めて運びます。消毒法として0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液での10〜30分間の浸漬があります。温熱洗濯機が使える場合は80℃,10分での洗濯で感染性はなくなるとされています。

患者さん自身の全身掻き傷については,それからの血液が職員や環境につかないようにドレッシングなどの工夫が必要であり,細菌感染の徴候がなければ消毒は不要と考えます。

ATLのキャリアの患者さんからの針刺し後の対応 (HTLV-I抗体陽性血液・体液などによる汚染事故) について,ガイドラインでは「事故者は原則として汚染事故直後,1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後および1年後にHTLV-I抗体を受ける。HTLV-I抗体陽性の場合は専門医の指示を受ける。」とされています。

(琉球大学・久田 友治)

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