02/10/04
■ 血液培養からのビブリオ属の検出
【質問】
 いつも丁寧に教えていただいて, ありがとうございます。

 進行の早い壊死性筋膜炎をきたす細菌に, A群連鎖球菌以外にもVibrio vulnificusとかAeromonas hydrophila, Photobacterium (Vibrio) damselaがあるようですが, 当院で経験した例では血液培養ボトルに細菌は生えてきませんでした。ビブリオ属は血液培養ボトルで検出できますか??? それとも壊死性筋膜炎でビブリオを狙って細菌検査を行う場合, もっといい方法があるでしょうか??? よろしくご教示ください。

【回答】
 血液培養陰性例がどの菌による症例か不明ですが, 当該症例の創部材料から分離されたVibrio属菌が血液培養で陰性であった事例と解釈致します。

 血液培養ボトルにおたずねの菌が生育するかという問題ですが, いずれの菌も血液の入った状態で発育可能と思われます。もとより好塩菌は食塩を含まない培地では発育しませんが, 一般に0.1%程度の食塩が存在すれば大部分のVibrioは一般的なブイヨンに発育します。V. vulnificusと性状が類似し, 代表的な好塩菌であるVibrio parahaemolyticusも血液の混入したボトルにおいて良好に発育します (西神戸医療センター 山本剛氏より私信)。またVibrio vulnificusを始めとした多くの症例報告において, ほとんどの場合に菌が血中に移行して高率に分離されています。

 このようなことから, おたずねの菌による感染事例では血液培養ボトルで培養可能と思われます。ただしVibrio damselaは, 発育至適温度が25℃であること, TCBS寒天培地でしばしば発育不良となることが知られており, 培養条件や分離培養に注意を払う必要があります。

(国立神戸病院・田中美智男)

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