03/02/14
■ 酵母の発育を阻止できる“キラートキシン”の製品化
【質問】
 食品会社に勤めている者です。食品の保存に興味があり, いろいろ調べているうちに“バクテリオシン”のことを知りました。乳酸菌が産生するナイシンなどの“バクテリオシン”については製品化に向けて研究が進んでいるように見えますが, 酵母の産生する“キラートキシン”はそうでもないように見受けられます。食品の保存の点からは酵母が問題となる場合も多いと思いますが, 酵母に発育阻止効果を持つ“キラートキシン”の製品化は難しいのでしょうか???

 “バクテリオシン”と“キラートキシン”のふたつの違いも含め教えていただければ幸いです。また役立つ文献, サイトなどがございましたら教えてください。

【回答】
 私の手持ちの本 (日経バイオ最新用語辞典) には, 「キラートキシンを産生するキラー酵母は多種類の酵母にみつかっており, キラートキシン (キラー蛋白) は免疫性の違いから少なくとも11種類のタイプに分類される。キラー蛋白はプラスミドに支配されているものが多いが, 核遺伝子支配のキラー酵母も分離されている。Saccharomyces属キラー酵母にはK1, K2, K3の3タイプが存在し, K1タイプが最も良く研究されているが, その産生はプラスミドにコードされ, 外皮蛋白に包まれたウイルス様粒子として存在する。ワインの醸造に細胞融合で育種したキラー酵母が実用化されている。ワインの醸造中に野生酵母などの汚染を受けるため, サントネージュワインは86年の新種からキラー活性のあるワイン酵母を採用した。このほか, サントリーではキラー酵母を固定化したバイオリアクターゼでビールを連続生産する技術を確立した。また, 宝酒造ではキラー蛋白の特性を調べる研究に熱心である。

 細胞融合技術による実用酵母へのキラー活性導入には細胞質導入法が用いられる。核融合を起こさせずに細胞質のみ融合させることによって, キラー蛋白をコードするプラスミドを実用酵母の細胞質に導入する。これを用いると, 醸造用株と同じ核を持つ融合株を得られるので実用的融合株が得られる」と書いてあります。
 一般的な事項の記載しかありませんので, 質問者が食品微生物関連の文献検索, あるいは上記食品会社の研究所に連絡をされては如何かと考えます。

(北里大学・阿部美知子)

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