04/03/30
■ この菌の分類は・・・
【質問】
 尿検体から血液寒天培地 (M58) でα溶血様の微小コロニーが検出されました。グラム染色を行なったところ, 丸いグラム陽性の双球菌でした。当院では, 陽性球菌の薬剤感受性検査はストレプトグループとそれ以外の陽性球菌と使用薬剤の組み合わせを変えて試験しているのですが, この菌の場合, どちらの薬剤の組み合わせで薬剤感受性検査を行なった方がよいのか, 判断に困っています。ご指導, 宜しくお願い致します。

【回答】
 ご質問の菌は血液寒天培地上でα溶血様の微小コロニーを形成する“丸いグラム陽性双球菌”であったということですが,まず“丸い”という表現が正円形に近いという意味なのか, 楕円形なのか,また“双球菌”が肺炎球菌のように縦に細長く連なる双球菌なのか, 小塊状に配列するのかで推定される菌種は異なります。質問の内容からだけでは推定は難しいと思いますが,もし正円形に近く小塊状に見えるようなところがあるのであれば,Aerococcus viridans の性状に類似しています。この菌は稀に尿からも分離されることのあるグラム陽性球菌で,血液寒天培地ではα溶血を示し, 微小な集落を形成します。通常は四連球菌の形態をとることが多いとされますが,双球状または四連状の配列を示します。レンサ球菌のように細長く連鎖するのではなく, ダンゴ状に小塊を形成する傾向があります。カタラーゼは存在しても弱いことから,カタラーゼ試験では陰性と判定されることが多いと言われています。

 もちろん細長い連鎖ならば緑色連鎖球菌や腸球菌が疑われますし,カタラーゼ陽性であれば発育の遅いブドウ球菌属やミクロコッカス属などが推定されます。カタラーゼ試験の結果はどうだったのでしょうか???。

 薬剤感受性検査をどのような薬剤の組み合わせで実施すべきかと言うことですが,仮にこの菌がA. viridans とするならば,十分なデータベースがありませんので回答しかねます。A. viridansは, 心内膜炎や創傷部からも分離されることがあるといわれますが,病院内の環境にも存在する菌であり,日和見感染として一過性に出現することもあると思われます。もし連続して尿から有意の菌量で分離されるのであれば,現在使用されている薬剤の両方の組み合わせで検査し,薬剤感受性の傾向を見てはいかがでしょうか。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


[戻る]