03/06/09
■ 抗菌試験にパン酵母を使用する訳は???
【質問】
 私どもは最終的に化粧品用の抗菌性原料を検索することを目的として, この抗菌試験を検討しているのですが, 設備などの問題で危険レベル1の菌しか取り扱うことができません。そういった事情の中で有効な試験菌を調査し, 検討しているのですが, ひとつ気になることがあって質問させていただきます。

 抗菌試験の試験菌株に酵母のひとつとして“パン酵母』を使用しているところがいくつかあるのですが, パン酵母はパンの製造に利用されるイーストであり, 特に人体に対して悪い影響があるとは考えにくく, 一体“なぜこのパン酵母を抗菌試験に使用している”のかわからないのです。特にカンジダ菌などは真菌症などの感染症を起こしやすく, 医療分野では大きな問題となっているようですが, “ひょっとするとパン酵母も体内に大量に入り込むと危険なのでしょうか???” 是非, お答えいただきたいと思います。宜しくお願い致します。

【回答】
 パン酵母を抗菌試験に用いる理由には (1) バイオセイフティー・レベルが低い, (2) 酵母は糸状菌より取り扱いやすい, (3) 従来から試験菌として報告があり, 同一の試験菌を用いることによって自験成績を既報成績と比較出来る, などがあげられると思います。したがって, 必ずしもパン酵母を使用しなくてもよいと思いますが, 化粧品に添加する抗菌物質の検索などでは, 自然界由来の微生物およびヒト由来の微生物が対象となりますので, ヒト由来の酵母ではなく本菌のような酵母が試験菌として長く使用されているのであろうと思います。

病原性に関しては, 健康なヒトがどれ位食べると危険かといったはデータはないと思います。皮膚を傷つけて擦り込む, あるいは静脈に直接注入して接種するといった方法であれば, 如何なる微生物でも病原菌となり得ます。

(北里大学・阿部美知子)

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