■ 高温発育の嫌気性菌の培養 | |
【質問】
いつも丁寧な回答ありがとうございます。高温で増殖する嫌気性菌を培養させたいと思っているのですが, 文献やインターネットを調べてもなかなか培養方法が見つかりません。一般の嫌気性菌 (ウェルシュ菌など) と同様に培養して良いものなのでしょうか??? 培地や培養環境 (特に菌を接種する時の環境) など, ご教授頂けると助かります。ちなみにClostridium thermoaceticaやC. thermocellum, Desulfotomaculum nigrificansを培養したいと考えております。どうぞよろしくお願い致します。 【回答】
嫌気性菌は, 菌種により酸素感受性がかなり異なっています。そこで嫌気性菌を, Extremely oxygen sensitive (EOS) anaerobic bacteria , strictly anaerobic bacteria, moderately anaerobic bacteria, aerotolerant anaerobic bacteria などと分類されることがあります。Clostridium perfringensはaerotolerant anaerobic bacteriaに属する酸素に鈍感な部類の嫌気性菌です。人の病気をおこす菌として知られているもののほとんどはmoderately anaerobic bacteria, 一部がstrict anaerobic bacteriaです。Strict anaerobic bacteria は強い酸素暴露で20分間以内に死滅します。EOSは数秒から数分間の酸素暴露で死滅します。EOSは, わたしたちの身の回りでは, 反芻動物などのルーメンに存在しますし, ありふれた菌で, その菌に適した環境はどこにでもあります。 さて培養ですが, あなたがどのような方法で培養を行う準備をしているかによりますが, その方法で目的とする菌が分離できない時には, 正式なガス噴射法または正式な嫌気性チェンバー法にを常に頭に置いて方法論を考えるべきです (いいかげんな嫌気性チェンバー法ではだめです)。これらはすべての嫌気性菌を分離できると考えてよい, 最も理想的な方法です。その基本は還元された過酸化物を含まない培地を使うことと常に酸素を菌から遠ざけることです。お尋ねの菌を含む, 液体の酸素に対して無防備な希釈操作は, 殺菌操作以外のなにものでもないと考えて下さい。もちろん, 対象菌によってはいくつかのステップを省略できると思います。自分でその点を確認して下さい。正式な嫌気性チェンバー法の修得をまずお勧めします。 (岐阜大学・渡邉 邦友)
|