2001/06/12
2001/11/16(追加)
■ 抗酸菌の液体培地からの迅速な同定法について
【質問】
 MGIT法などの液体培地からの迅速な同定法としてのひとつの検討方法です。まず, 培養陽性液の塗抹標本で抗酸菌を確認し, それが活性菌であることの確認(MTBの場合はコード形成など)後に, Amplicor-PCRを用いて検査すると非常に効率良く, 迅速にMTB, MAV, MINとが同定可能であり, 臨床側にも早く報告ができると思われますがいかがでしょうか?でも, やはりPCRについては臨床検体からの微量菌の検出目的のみの使用でないとまずいでしょうか?コスト面でもAccuProbe法やDDH法とあまり違いがないと思われるのですが?当施設ではMGIT法による培養を行っておりますが, 約一年間のデータから喀痰においては塗抹陰性,PCR陰性,しかし培養陽性が約12%あり, 同時に培養した固形培地には未発育もあります。ゆえに, 液体培地からの直接できる迅速,高感度, そして効率の良い同定法を望んでおります。どうぞ良い方法がありましたらご教授ください。

【回答】
 MGITなどの液体培地で培養された抗酸菌, 特に結核菌やM. avium complexを同定するのに, Amplicor-PCRを用いる方法は, 非常に微妙な問題を含んでいます。検査性能としては, 液体培地に発育した抗酸菌をAmplicor-PCRで同定するのになんら問題はありません。問題は;

(1) 1999年4月改訂された添付文書をよく読んでください。その効能・効果(使用目的) の欄で, Amplicor-PCRでの抗酸菌検査は, 体液, 気管支洗浄液, 組織 (結核菌群のみ) を検査対象とすることが明記されています。このことは, 製造責任 (Product Liability; PL) がこれらの検体に限定されることを意味しています。液体培地に発育した抗酸菌をAmplicor-PCRで同定し, 例えば結核菌であると“間違って”結果が得られた場合, 試薬を製造, 販売したメーカーにはまったく責任がなく, 検査試薬を自らの判断で“転用”した使用者(臨床検査の現場)に全面的な責任があることになります。
現在, Amplicor-PCRの製造・販売元では, 適用拡大として液体培地に発育した抗酸菌についても同定検査できるように認可を申請しています。

(2) もうひとつの問題は, 診療報酬点数です。Amplicor-PCRでの結核菌検査は, 「D023 微生物核酸同定・定量検査」の項目の“4 結核菌核酸同定精密検査” 560点 (M. avium complexでは670点) で請求されます。この項目には, 特に検体の種類が明記されていないことから, 液体培地に発育した抗酸菌の同定検査も請求できると読み取れます。では, 液体培地に発育した抗酸菌をAmplicor-PCRで同定してもよいかとなると, (1) の問題, 認可を得た検体の種類に“液体培地に発育した抗酸菌”が含まれていないということになり, 保険請求できなくなります。
いずれにしろ, Amplicor-PCR が液体培地に発育した抗酸菌の同定にも使用できるように早く認可されるのを待つことになります。

 平成13年8月20日付けで, 抗酸菌培養した液体培地を検体としたAmplicor-PCRでの菌種同定が認可されました。これによって, MGITなどで培養した培養陽性培地から直接PCR法を実施しても, 保険請求することができるようになりました(「D023 微生物核酸同定・定量検査」の項目の“4 結核菌核酸同定精密検査” 560点 , M. avium complexでは670点)。詳しくは, ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(http://www.rdj.co.jp/)のAMPLICOR Lab. Focus 9月号を参照ください。

山根 誠久 (琉球大学)

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