03/02/26
03/03/03
■“非定型抗酸菌症”で入院・・・患者は強いストレス状態
【質問】
 74歳の父のことで相談申し上げます。高血圧と糖尿の病歴があります。肺のレントゲン撮影の影と咳が続くことから痰の検査を行い, 陽性 (+) で即入院。治療開始10日ほどできつい副作用が出て, 肝機能を悪化。治療中止で肝機能回復の治療。その間に“非定型抗酸菌症”とわかり, 入院して2ヶ月後からストレプトマイシンなどによる治療で20日経過。

 結核病棟という孤独な環境の中で, 先の見えない入院期間。他に悪い症状はないし, 感染しないのに外出もままならない現状。糖尿の方は血糖値的にはたいしたことなかったのですが, この際糖尿病食でということで8〜9キロ体重減。真面目に治療に取り組むも, 精神的に強いストレスが出てきています。このままでは別の病気にならないかと心配です。

 近くの呼吸器科のある病院に転院できないものか, 通院での治療は不可能かお尋ねします。

 現在は自宅から1時間ほど車でかかる結核専門の病院で3ヶ月入院中。母が1週間ごとに見舞っています。

【回答】
 結核を専門とする国立療養所の病院でしたら, 痰の顕微鏡検査で“陽性”になった場合, 遺伝子検査を直ちに行い, 1〜2日で“結核”なのか“非定型抗酸菌症 (現在は非結核性抗酸菌症と呼びます)”の鑑別を行います。従って, 痰の検査で“陽性 (顕微鏡検査のみ陽性)”で即入院というのは考えられません。ただ, 胸のレントゲン写真で肺の異常な像が1/3以上に達している場合には入院させますし, 結核であるのか, そうでないのかは胸の写真から判断できます。ただし非結核性抗酸菌のなかのひとつ, M. kansasiiという細菌の感染症では病状が結核によく似ているため, 鑑別できないこともあります。

 痰の3回連続検査で3回すべてが顕微鏡検査で陽性で, 遺伝子検査で“結核菌陽性”となれば即入院となりますが, 痰の顕微鏡検査で陽性, 遺伝子検査で陰性であれば, 外来治療で観察します。

 もし, 非結核性抗酸菌がM. kansasiiという細菌であればストレプトマイシンで治療しますが, 他の非結核性抗酸菌症では使ったり, 使わなかったりします。またM. kansasiiという細菌が原因で, 胸のレントゲン写真の異常な影が大きい場合には入院治療することもありますが, その他の非結核性抗酸菌が原因の場合には, 普通, 外来で通院して治療します。

 非結核性抗酸菌症の治療で糖尿病は一番懸念する病気です。特に体重の減少は薬の副作用が強くなるため良くないと言われています。

(国立都城病院・斉藤 宏)

【質問者からのお礼】
 ご返事, ありがとうございます。

 父は, 副作用で具合が悪くなった時に個室に入り, 不自由ながらも好きな読書などで気を紛らわせ, すごしていました。3ヶ月たった頃, その個室を他の患者さんに譲ることになって (追い出され), 事態は急変。治療方針, 待遇などを不満に思った父が, ハンストなどで抵抗したので, 病院側が通院による治療ということを勧めて退院。3ヶ月ぶりに自宅に帰ってきました。近くの内科で毎日ストレプトマイシンの注射, 他の薬は2週間分の処方で, 半月ごとの通院で良くなりました。先日の診察では, ストレプトマイシンも隔日になり, 次の診察も1ヶ月以上先です。予約が入れられて待ち時間も少なくなるでしょうから, すごく楽になり喜んでいます。

 それにしても, 初めて外来でその病院に行った時は結核の専門家の医師の診察。入院しての担当医はアレルギ−治療の医師。なんか, 今もって納得しにくい出来事でした。幸い, 父が自分の病気について勉強し, 意思を主張したので, 今は自宅で治療に取り組んでいます。病院側の言いなりになっていたら, 他の病気になっていたかも・・・“患者は自分の病気のことを, 自分でよく勉強すべき時代なのですね”。まかせっきりでは不幸なことになりかねない。今回の父の入院でそのように思いました。ただ, 患者が高齢などで, 自分の意思をはっきりさせられない時はどうなるのか心配。もっと医師や医療機関そのものを信頼できれば安心してお任せできるのに残念です。


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