04/01/20
■“紅色陰癬”由来の検体の培養・同定方法について
【質問】
 はじめまして。病院の細菌検査室に勤務している検査技師です。

 検体として皮膚の培養がきたのですが, “紅色陰癬の疑い”とのことでした。Corynebacterium mimutissimumが起因菌で, ウッド燈検査で同定をするということはわかったのですが, 培養条件がどうしてもわかりません。小川培地で培養 (???) ということも主治医から聞いたのですが, どのくらいの培養で発育してくるのか??? 培養温度は??? どのようなコロニーを形成するのか??? など詳しいことがわかりません。この菌に関しての培養条件, コロニーの特長, ウッド燈検査以外での同定法などがあれば教えていただきたいのですが・・・よろしくお願いします。

【回答】
 “紅色陰癬”疑いの検体が提出されたとのことですが,まずウッド灯 (Wood’s lamp)検査は分離した菌株を同定するものではなく,病変部の皮膚にウッド灯 (波長365nmの紫外線)を照射して疾患の診断や感染微生物の推定をするためのものです。発色は原因微生物によって異なり,紅色陰癬の原因とされるCorynebacterium minutissimum が感染した皮膚では桃色から珊瑚色の蛍光を発するといわれています。ウッド灯陽性部位と皮疹のある部位が一致し,しかもその該当部位から材料 (鱗屑など) を採取し,グラム染色によってグラム陽性桿菌が証明されれば,本症の存在は確定的であるとされています。

培養は必須検査ではなく,必要ならば血液寒天培地などを使用することが推奨されていますが,詳細な性状についての記載はありません。C. minutissimumは正常の皮膚や口腔内に常在し,抗菌剤の治療後に無症候性に増殖することがあるとされています。当院では腕の水泡部より分離した経験がありますが,他のCorynebacterium 属と比較して特別異なることはなく,コロニーの色調は白色_灰白色で, ブドウ球菌のコロニーに近いものではないかと思います。コロニーの大きさや発育の早さは個々の菌株によって異なるので一概には言えませんが,Corynebacterium 属の多くの菌株は血液寒天培地 (好気または炭酸ガス) での1夜培養 (35_37℃) で発育し,微小_小コロニーを形成します。少なくとも2日間培養すればコロニーの確認は可能と考えられます。

 培養で小さなコロニーのグラム陽性桿菌を分離し,カタラーゼ試験陽性ならば,Corynebacterium 属が推定されます。現在市販されている同定キットの多くは,C. minutissimumが同定対象菌種に含まれていますので,そのような同定キットを使用すれば同定可能と考えられます。ただ先に述べましたように,臨床的には紅色陰癬を疑う材料から染色または培養でグラム陽性桿菌を証明することが重要であり,詳細な同定が必要か否かは主治医と相談されたらいかがでしょうか。

 また紅色陰癬には同時に白癬やカンジダ症が合併していることがあるため,直接鏡検の際には真菌にも注意する必要があると思います。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


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