04/04/27
■ 空気感染する微生物
【質問】
 第50回の国試で, 「空気感染するもの」という問で:

 1. 結核
 2. MRSA
 3. 水痘・帯状疱疹
 4. B型肝炎
 5. プリオン

のなかで、2つ選べとあり, 私は、1と2を選択しましたが, 水痘・帯状疱疹のほうが“飛沫感染”に近いと考えられませんか??? 菌の床上浮遊度はMRSAのほうが浮遊すると思いますが???

【回答】
 質問者は, MRSA の感染様式を空気感染, 水痘・帯状疱疹の感染様式を飛沫感染と考えたということでしょうが, もう一度学習したことを整理してみてください。国家試験で問いたいのは, 受験者諸君の基本的な知識です。解答には, 特殊で例外的な事例は考慮する必要はありません。これを踏まえて, 簡潔にお答えします。

 MRSA は, 医療従事者等の手指を介して伝播する微生物として代表的なものです。また, 水痘・帯状疱疹の原因微生物である水痘・帯状疱疹ウイルスは, 医療現場において空気感染の様式をもったウイルスとしてよく知られています。

 以下は補足です。まず, 言葉の定義について確認しますが, 「空気感染」とは, 飛沫核を介する病原性微生物の伝播様式であり, その飛沫核は空気中に無期限に漂い, 感染源から遠方に到達することが可能です。一方「飛沫感染」とは, 感染源から発生した微生物を含む飛沫を介する伝播様式であり, この飛沫は空気中を速やかに落下し空中に漂うことはありません。具体的には, 飛沫核では直径が5μm以下であるのに対して, 飛沫は5μm以上と大きく, 空気中での落下速度も, 前者では1 cm/秒に満たない程度であり, 後者の数10 cm/秒と違いがあります。

 さて, 感染様式 (感染経路) を理解することは, 感染防止策を講じる上で重要であることは言うまでもありませんが,「空気感染」の様式を持った病原微生物に対する対策では, 病室を陰圧にするなど, 空調をコントロールする必要があります。また, MRSAに対しては, 医療従事者の手指の衛生管理などの「接触感染」対策が一般的です。その他の感染経路や感染様式, そして, それぞれに応じた感染対策についても, もう一度整理されてみてはいかがでしょうか。

(信州大学・川上 由行)


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