01/12/05
■“強酸性水”による膀胱洗浄の適用と効果
【質問】
 現在, 73歳の母なのですが, 糖尿病, 糖尿病性腎症, 高血圧症を患っており, 今年8月より神経因性膀胱のため膀胱留置カテーテルを装着しております。MRSAが尿中+3, 咽頭+3であり, 感染症状はなく, 11月14日に退院し, 在宅生活をしております。入院中よりイソジン20倍希釈液にて膀胱洗浄 (9月15日頃より)をしておりますが, 改善の兆しはありません。
 (1) 今後, “強酸性水”により, 膀胱洗浄および鼻腔, 口腔の噴霧, うがいを試したいと考えているのですが, 強酸性水を膀胱洗浄などに使用しても安全なのでしょうか??? 
 (2) また, “強酸性水”にイソジンを混ぜて使用するのはどうでしょうか???  また, その効果は期待できるのでしょうか??? 
 (3) 膀胱洗浄を行う場合は, 1日の回数, 1回に注入する量, 膀胱内にとどめておく時間はどうでしょうか??? 
 (4) 鼻腔, 口腔への噴霧は, スプレー式のようなものを考えているのですが, どうでしょうか??? 
 (5) その他, 強酸性水を使用する際の注意事項や他の良い方法があれば, お教え頂だきたくよろしくお願いいたします。

【回答】
(1) 強酸性(電解)水は, 急性毒性 (ラット), 皮膚累積刺激試験, 口腔粘膜刺激試験 (シリアンハムスター), 胃粘膜刺激試験 (ラット), 変異原性試験, 細胞毒性試験, 眼粘膜一次刺激性試験 (ウサギ), 食道粘膜刺激試験 (ラット) などで, 安全性が確かめられています。従って, 強酸性(電解)水を膀胱洗浄などに使用しても安全です。

(2) 強酸性(電解)水の殺菌効力は少量の次亜塩素酸です。つまり, 塩素系消毒薬を使いやすくしたものと考えてください。イソジンは, ポビドンヨードが主成分です。これは, ヨウ素とポニビリルピロリドンとの複合体で, ヨウ素が複合体から徐々に遊離し, 殺菌効果を示します。塩素とヨウ素はともにハロゲン族に属する化学物質です。つまり, 反応の速さの違いはあっても作用の仕方には大きな違いがありません。つまり, 混ぜて使用することはできますが, あまり意味のある使用方法ではありません。

(3) 留置カテーテルは, 一度感染すると直りにくく, 膀胱洗浄でもMRSAが消えないようであれば, 可能なら一度カテーテルを抜去して, MRSAがなくなるまでは間歇導尿 (1日6〜7回) に変更されてはいかがでしょうか。間歇導尿については入院して行うか, 介護者に覚えていただいて行うかですが, いずれにしても泌尿器科専門医にご相談されますことをお勧めいたします。
強酸性(電解)水による膀胱洗浄は, 1回約100〜150 mlを4〜5回 (総量500〜600 ml) カテーテルから膀胱内に注入して, 自然排液にて洗浄をし, 膀胱内には貯留させません (膀胱内にとどめておかないでください!!!)。行う回数は1日1回です。

(4) スプレー式は, 粒子が細かくなると殺菌効果が低下しますのでお勧めできません。うがいができる状態であれば, 強酸性(電解)水で1度に3回ぐらいのうがいがよいと思います。

(5) なるべく作った直後の強酸性(電解)水を使用する, 有機物などにより殺菌効果が低下することなどに注意して使用してください。陰部洗浄に強酸性(電解)水を使用している病院もあります。

(昭和大学・中村 良子)

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