02/01/21
■ 吸入器の消毒方法, 特に加熱消毒について
【質問】
 看護婦です。吸入器の消毒方法について研究をしています。消毒薬を使うのは簡単ですが, 耐性菌ができてしまうことがあるので, 熱湯による消毒が可能か研究しています。痰から検出される細菌は何度の温度で死滅しますか??? また, HIV,HCV,HBsについてもどのくらいの温度で死滅するのか教えてください。

【回答】
 細菌が10分間の加熱で死滅する温度を温度死滅点 (thermal death point)と言います。大腸菌では55度, 連鎖球菌では62度, 結核菌では60度です。よって, 痰から検出される細菌 (一般細菌, 真菌, 嫌気性菌)は, 55℃から60℃, 10分の加熱で死滅しますが, 唾液や蛋白成分に含まれて存在していますので細菌のみを消毒対象とする場合は, 通常60〜65℃, 30分の加熱または100℃, 10分の加熱により消毒します。
 ウイルスに関しては, 温度死滅点が詳細に明記されている論文はありませんがHIV, HCVは80℃, 1分, またHBVについては通常, 100℃、2分で死滅します。ただし, 血液成分や蛋白成分が多量に含まれている材料や材料中に気泡が生じた状態で加熱された場合は消毒が不完全になりますので注意が必要です。特にHBVが温度に抵抗しますので, 医療の現場で上記すべての微生物を対象として消毒するには, 100℃, 20分の煮沸消毒が最も適切です。
 消毒した器具類を同一人に再使用する場合は, 100℃, 2分でも結構かと思いますが, 素材の耐久性が問題となります。

(大阪大学・浅利誠志)

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