■ 培地ラベルに記載されたpHの信頼性は如何に??? | |
【質問】
いつも丁寧なご指導を頂きありがとうございます。私は製薬企業で製品の微生物試験を担当しております。工場の品質管理課から, 試験に際し培地のpHを確認しているのかと問い合わせがありました。試験に用いる培地は“市販の調製済み”のものがほとんどなので, 培地容器のラベルに「滅菌後のpH 5.6〜5.8」などのように記載があります。私の部署ではこの記載を信用して, 特にpHの測定は行わずに調製しておりました。今回他部署からこのような指摘を受け, 改めてラベルの記載事項について疑問を持ちましたので質問させていただきました。このpHはラベル記載の調製法であれば, 必ずこのpHは保証されるということなのでしょうか??? そのために何か緩衝剤のようなものが入っているのでしょうか。ラベル記載の調製法には「精製水」と記載がありますが, わが社では「蒸留水」を用いておりました。それ以外はラベル記載事項に沿って調製しておりましたが, 何か問題はありますでしょうか??? 指摘のあった部署から, 微生物の成育に影響が出ると困るので培地のpHを毎回調製して欲しいとの依頼を受けたのですが, ラベル記載事項に信頼性があるということであれば, 試験の効率上, pH調整は省略したいと考えております。今後, わが社の微生物試験法を見直していく上でこの点をはっきりしておきたいと考えました。どうぞよろしくお願いいたします。 【回答】
(1) ラベル記載の方法で調製した場合, 培地のpHは保証されるのかどうか
(1) ラベルに記載された“1,000 ml程度以下の調製”であれば, 表示のpHとなります。また, 試験成績書 (メーカーに請求すると発行されます) に記載された性能は保証されます。しかし大量の培地を一度に調製する場合には, 熱付加によるpH変動や性能の劣化を来たす場合がありますので, 調製する容量によっては培地のロット毎に一度試験して確認することを勧めます。その背景として, 粉末 (顆粒) 培地を調製する際の微生物の発育に影響を与える因子として, 培地調製時の容量と加温 (滅菌) 条件が大きく影響することがあげられます。培地調製容量が増えると, 加温溶解時間あるいは滅菌時間が長く必要となり, 結果的にpH変化, 酸化物質による発育抑制を生じることがあります。一方, 粉末培地に代わって使用される生培地では, 製造メーカーにおけるいろいろな改善工夫により, 大容量滅菌にもかかわらず用事調製と異ならない性能を維持していますが, 粉末培地においては, 使用するユーザによる自家調製のため, 調製容量が多様で, 条件によってはpH規格内であっても上限, 下限で差が生じたり, 場合によっては規格をはずれることがあることも否定できません。 また粉末培地の有効期限については, 製品に記載されている有効期限はあくまでも“未開封の場合の有効期限”ですので30℃以下の室温に保存し, 有効期限内に使用してください。一度開封した場合の粉末培地については, 培地を入れたボトルに多量の培地が残存している場合と, 半量以下に減った場合とでは, 粉末培地と空気の接触頻度が増え, 培地が酸化され, 特にエキスを多く含む培地では粉末の変色を伴う性能の劣化も進行しますので, 密栓して早めに使用することが必要です。 (2) pH維持のための緩衝剤の添加については, それぞれの培地に記載された処方を確認してください。 (3) 使用する水については, 蒸留水あるいはイオン交換などによる精製水を使用するのであれば使用上, 影響ないと考えます。 (日水製薬・三品 正俊)
【質問者からのお礼】
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