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【質問】
初めてご質問申し上げます。私は環境分析事業会社で微生物試験を担当している者です。このたび,
レジオネラ属菌の検査に取り組むことになりました。レジオネラの分析方法自体は今のところ特に問題視していませんが,
レジオネラ菌の判別方法が困難だとお伺いしています。そこで, 事前に環境試料などを用いて予備試験を行いますが,
判断基準として, 実際に標準株を微生物株系統保存機関から購入して, レジオネラのコロニーを確認することも考えています。この際,
購入後のレジオネラの保存方法をどうするべきかわかりません。レジオネラの取扱い,
保存方法, バイオセーフティーの面も含めてご意見下さい。また, レジオネラの専門書をご存じでしたら教えてください。
【回答】
・購入後の菌株保存方法について
レジオネラ菌に限らず菌株の保存方法はいくつかあります。?80℃のフリーザーが設置されている場合には10%スキンミルクや菌株保存用商品
(マイクロバンク) に濃厚な菌液を作成して凍結保存する方法が簡便と思います。他の方法による菌株保存方法については,
この「質問箱」の中にも菌株保存方法に関する回答がいくつかありますので参考にして下さい。
・レジオネラの取り扱い
レジオネラ菌は日和見感染の病原体のひとつです。健康な実験者にとっては病原性がありませんが,
なんらかの免疫低下があるヒトに対しては病原菌として感染します。レジオネラはバイオセーフティー・レベル
(BSL) 2に属すると考えます。BSL 2とは, ヒトあるいは動物に病原性をもつが,
実験者, 地域社会, 家畜, 環境に対して重大な災害をもたらさないもの, 実験室内での暴露で重篤な感染症を起す可能性はあるが,
有効な治療法, 予防法があり, 伝播の可能性が低いものと定義されています。多くの病原微生物と日和見感染の病原体がこのレベルに含まれます。BSL
2の微生物の取り扱いは通常の微生物実験室で可能です。もしエアゾール発生のおそれがある実験の場合には安全キャビネット中で行います。
・レジオネラの専門書
レジオネラ菌に関する専門書は多数あります。質問者は環境分析事業者ですので,
ヒト感染症の専門書とは若干異なるかもしれませんが, 近代出版社「臨床と微生物」Vol.
25 No. 1にレジオネラの特集号があります。また松本 慶蔵編 「新病原菌の今日的意味」(医薬ジャーナル社),
山口 恵三編「新興再興感染症」(日本医事新報社)などがあります。環境レジオネラについては厚生労働省のホームページ[http://www.mhlw.go.jp/]にアクセスしてみて下さい。環境レジオネラに関する多くの情報が得られます。
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