04/07/13
04/07/20
■ レジオネラの薬剤感受性試験
【質問】
 はじめまして市立○×病院で細菌検査を担当してます。

 当院で先日, レジオネラ菌による肺炎の患者さんが入院されました。尿中抗原が陽性となり, その後, 培養検査でもレジオネラ菌の発育が確認されました。本日, 担当の医師より, 薬剤感受性検査を実施してほしいとの依頼がありました。その医師によると, 最近の文献で, マクロライド耐性株が増えてきていて, この場合はニューキノロン剤の投与が望ましいと書かれてあったそうです。この患者さんには現在, マクロライド系とニューキノロン系の2剤が投与されてますが, 治療上, 抗生剤の投与が長期にわたるので, 薬剤感受性を知っておきたいということでした。しかし私自身, 以前に参加した勉強会でレジオネラ菌の薬剤感受性検査は, 一般病院では対応不可で, NCCLSに判定基準もないと聞いてきました。そこで質問は・・・(1) 現在, レジオネラ菌の薬剤感受性検査は検査できるのでしょうか??? また, (2) その試験方法は一般病院でも対応できるのでしょうか??? (3) できない場合, 対応可能な施設はどちらの施設になるのでしょうか??? 以上の点について教えて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

【回答】
 レジオネラ属の薬剤感受性試験法は標準法がなく, 使用する培地の種類によってそのMIC値が変動するなど, 問題があるとされています。現在使用されている試験方法には4つありますが, ひとつは動物を使用するため実際的ではないので, 今回は検査室で実施可能な3つの方法を紹介します。

1. 微量液体希釈法: 培地1,000 mlに酵母エキス10 g, 活性炭2 g, L-システイン塩酸塩0.4 g, 可溶性ピロ燐酸鉄0.25 g, N-aceamide de-2-aminoetane sulfonic acid 10 g, α-ケトグルタル酸カリウム1 gの組成で, 一般細菌の微量液体希釈法と同様に試験プレートを作成します。

2. 寒天平板希釈法は, 微量液体希釈法で用いる液体培地に適量の寒天を加えて使用します。培養は, 湿潤環境 35℃で, 24_48時間培養後に判定します。

 Legionella属の菌種は細胞内寄生体であるため, 薬剤が細胞内に移行できなければその効果はありません。そのような理由で, penicillinやcephalosporinは臨床的には有効に作用しません。in vitroでの薬剤感受性成績が良好な薬剤は, azithromvcin, clarithromycin, ciprofloxacin, pefloxacin, levofloxacin, moxifloxacin, fleroxacin, trovafloxacin, minocycline, doxvcycline, ketolidesとされています。in vitro での試験ではβ-lactam薬も感受性を示す場合がありますが, 細胞内移行が悪いので, 臨床的には有効に作用しません。臨床的にはerythromycin, rifampicin, tetracycline, fluoroquinolone, 新規開発のmacrolideが有効とされています。

3. E test (AB BIODISK) を用いる方法: BCYEα培地にMcFarland 0.5濁度の菌液を塗布します。培養環境は36℃, 5%炭酸ガスで72時間培養した後に判定します。E testでは, 寒天平板希釈法と比べ, 感性に判定される傾向が認められるとの報告があります。

 最後に, 一般病院でもレジオネラの薬剤感受性試験は対応可能でしょうかとの質問ですが, 上の2つの方法は稀にしか試験しない施設では不可能と考えます。しかしE testは, 試験紙と培地があれば通常のディスク拡散法と同様に実施できると思います。

(琉球大学・仲宗根 勇)


【質問者からのお礼】
 ご返事を頂きありがとうございました。今後もよろしくお願いします。


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