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【質問】
初めてご質問申し上げます。「遠心分離濃縮法」を用いて, レジオネラ属菌の検査を行いました。自社で資料として結果を保管していくのですが,
培地に出たコロニーをレジオネラと断定する方法がわかりません。様々な資料を見る限りでは3〜5日で発育すると記載されていたり,
2日目〜だったりとばらばらです。現在2検体を検査しましたが, 内1検体は8日目にそれらしきコロニーがBCYEの寒天培地にのみ確認できました。2検体目は20時間後にBCYE,
YWC共にかなりの数のコロニーが出ました。どちらも酸臭をおびた灰色で, 標準株で見たのと同じようなものです。グラム染色での検査はしていません。標準の培養速度と断定方法を教えてください。
【回答】
まずLegionella の標準的な培養速度ですが, Legionella に限らず,
菌種の培養速度は菌株や培養環境 (培地, pH, 培養環境, 温度, 湿度)によって異なります。一般的に自然環境に生息する細菌類は動物寄生または常在する細菌類に比べ発育速度は遅い傾向があります。特にLegionella
属の発育速度は遅い部類の菌種です。全米微生物学会の刊行する「Manual of Clinical
Microbiology」ではLegionella の培養期間は湿度環境で最低5日間培養するように記載されております。他の文献などではLegionella
の培養期間は1日では発育せず, 2日目以降に発育する。または3日培養で微小集落を形成し,
5〜7日培養で完全な集落を形成するとしているのもあります。また2〜5%濃度の炭酸ガス培養で検出が早くなる場合あるとの報告もありますが,
Legionella の増殖できるpH域は6.90±0.05の範囲であり, 培地のpHが安定している場合には特に炭酸ガスを必要としません。逆に炭酸ガス濃度が高い場合には発育阻害に働く場合があるとの報告もあります。今回のコロニー検出に差を認めた原因は,
材料中に含まれる菌の濃度と菌株の違いよるのではないかと考えます。最初の材料に含まれていた菌濃度が低く,
肉眼的にコロニーとして確認するのに時間を必要とし, 2番目の材料では含まれる菌濃度が高かったため,
微小集落でも肉眼的に確認できるようになった。またコロニー形成にはそれぞれの菌株における分裂速度も影響します。疑わしい微小コロニーを顕微鏡の低倍率で観察するとさらに検出は早くなります。
次に分離菌種の確認方法についてですが, Legionella のコロニー
(B-CYE, WYO寒天培地) は正円形, 青みがかった水様集落または牛乳を滴下したような集落を形成します。疑わしいコロニーを血液寒天培地とB-CYE培地の両方に純培養します。2日目以降にB-CYE培地に発育して,
血液寒天培地には発育しなかった場合, Legionella の可能性が高いと言えます。また分離培地へ紫外線ランプを照射することでコロニー発色からも菌種の推定も可能です。同定鑑別方法については本質問箱「レジオネラの培養に必要な機器,
装置」を参照して下さい。
(琉球大学・仲宗根 勇)
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