■ LIM培地について | |
【質問】
微生物検査センターに勤務している者なんですが, カキ検査時期になると腸炎ビブリオ用に1%加NaClのLIM培地を作成するんですが, 作成後, 培地の色がものすごく鮮やかな紫色になりました。NaCl添加でなったのだと思い, 普通に使用しようと思い, 食品の検査でEC培地より分離した菌を確認のため, LIM培地に植えたところ, 24時間後の培地は上層部は鮮やかな紫で, 下層は透明になっていたんです。作業者の人も初めて見たので, 判定も (?), “陰性”でとってもいいものなのかわかりません。 何故このようになったのか, 培地自体がおかしいのか教えてください。今回培地のロット番号もちょうど変わった時期なので, 何が原因なのかわかりません。宜しくお願いします。 【回答】 LIM 培地はリジン・デカルボキシラーゼ (リジン脱炭酸酵素) 産生性とインドール産生性および運動性を同時に検査できる培地で,pH指示薬としてブロムクレゾール・パープル (BCP) が添加されています。本培地にリジン・デカルボキシラーゼ陽性の菌株を培養すると,培地中のリジンを脱炭酸して, アルカリ性のカダベリンを産生し,培地がアルカリ側に変化します。その結果pH指示薬のBCPが紫色となり,培地全体が未使用の培地よりも明瞭な紫色を呈するというのが培地変色の機序です。ご質問では, 培地を作成した後, 未使用の段階で鮮やかな紫色であったとのことですが,これは培地を作成した時点で既に培地がアルカリ側に変化していたことを示します。考えられる理由としては,培地あるいは食塩を溶解した溶液がアルカリ性であったか,もしくは容器にアルカリ性の成分が付着していたかなどが挙げられます。腸炎ビブリオ検査用に1%NaCl添加のLIM培地を作製されたとのことですが,ビブリオ用の選択培地はアルカリ・ペプトン水をはじめとしてpHが高くなっていますので,それらの成分の混入も考えられます。LIM 培地のpHは6.7±0.2程度ですので, もう一度培地を溶解した時に使用した溶液のpHをチェックして作り直してみてください。また, その培地に菌を培養した時に培地の下層部が透明になったという現象ですが,まず一つ考えられる原因として, 培地のpHがBCPのpH測定有効範囲 (5.6_7.2) を大幅に超えてしまったことによる色素の退色です。作成時点でアルカリ性の培地にさらにリジン分解性の菌を接種して培地のpHが著しく高くなったことによる変化かもしれません。もう一つは,腸内細菌の中には培地中の色素を還元して脱色する菌が存在することが知られており,使用された菌がそのような性状をもつ菌であった可能性もあります。いずれにしても再度pHをチェックして培地を作成されることをお勧めします。 (公立玉名中央病院・永田 邦昭) |