■モラクセラ (Moraxella) は膣炎の原因菌になる??? | |
【質問】
以前, 当院において帯下の塗抹で陰性の球菌を確認しました。バックグラウンドは多核球が (+) 程度で, 貪食像を認めたので, リン菌を疑って培養を行いました。しかし, 簡易同定キットを用いて同定したところ, 結果はモラクセラ・カタラーリス (Moraxella catarrhalis) となりました。糖分解を調べてみてもやはりリン菌とは異なり, モラクセラの性状でした。これはモラクセラによる膣炎と考えてもいいのでしょうか? それと, モラクセラの抗菌薬のブレーク・ポイントですが, NCCLSの規定にない薬剤について, 臨床医から判定を求められた時, どのような返事をすればよいのでしょうか? よろしくお願いします。 【回答】
もうひとつの質問 M. catarrhalisの感受性検査ですが, 本来M. catarrhalisの治療薬はペニシリン系薬であり, 感受性検査の必要性は強く求められていませんでした。さらにペニシリン系薬以外の薬剤のほとんどが低いMIC値にあり, そのためにNCCLSではpenicillin G (≦0.12μg/ml), ampicillin (≦0.25μg/ml) のブレークポイントしか制定せず, βラクタマーゼ産生試験の実施を指示して来ました。βラクタマーゼ産生菌株の場合はPC-G, ABPC, AMPC, PIPC, CETおよびCEZの各薬剤は耐性と判定することになりますが, 最近分離されるM. catarrhalisのほとんどの株がβラクタマーゼ産生菌です。そのためβラクタマーゼ阻害合成ペニシリン薬やテトラサイクリン系, マクロライド系, ニューキノロン系が第1選択剤として推奨されています。化学療法専門医の中にはM. catarrhalisの検査はβラクタマーゼ試験のみで良いと言う方もいますが, 経済性と手間の問題が解決されるなら, 院内分布の統計把握を目的として代表的薬剤の感受性検査を実施しても良いと思います。順天堂大学では25薬剤の集積を掲載していますので一読されてはいかがでしょうか (小栗豊子編集: 臨床微生物検査ハンドブック. 1996)。ゆえに臨床医から各種薬剤感受性検査の要望があった場合には, ブレイクポイントによる判断ができないこととその理由をよく説明した上で, 測定してあげてはいかがでしょうか。これらの集積を臨床医とともに分析した上で臨床的ブレイクポイントが制定されれば最高ですね。 (大手前病院・山中喜代治)
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